• 2007.12.27

    2007年のCSR広報を振り返る

    スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。

    その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。

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    ■不祥事企業続出によって失われたもの

    今年もあとわずかになりました。今年一年、本当にありがとうございました。
    毎号を書かせていただく中で、逆にCSRの奥深さを学ぶということができたように思います。

    この号が私の今年最後の号になりますので、締めくくりとして今年一年のCSRの動きとその広報について振り返ってみたいと思います。

    まず、誰の目にも明らかなのは、今年は「不二家」という老舗ブランド企業の不祥事に始まり、「船場吉兆」という同じような食系企業の不祥事に終わった一年というこでしょう。

    消費者にとって、食の安全がこんなにも不安定なものだったのかということを考えさせられる一年はなかったかもしれません。中国の野菜も含めて、過去から言われてきた数々の食の危険性が、これほど身近な危険として現実とセットで目の前に並べられたのはおそらく過去最大です。

    この連続する食の不祥事がもたらした影響は、食の安全を脅かすというような狭小な分野にとどまらず、ある官僚の収賄行為が官僚全体を貶めるのと同じく、「企業は放っておくとろくなことをしない」というイメージが社会に浸透してまったことが最も深刻ではないかと思います。

    それは情報のグローバル化と共有化の時代において、これらのニュースは海外も知るところであり、「日本企業ほど誠実な企業はない」と世界的評価を受けてきた信頼を破壊するほどの影響力を持っています。

    日本のGDPは今後成長率は良くても1%、社会保障にかかる費用は2%ずつ増加していきます。このような日本が世界で生き残っていくためには、「技術力」と「知的財産」で勝負するしかありません。しかし、それを支える土台は「信頼」であり、それが崩されていった一年というのは背筋が寒くなるものがあります。

    あっという間に信頼を失った企業が信頼を回復するまでにかかる時間とコストが膨大であるように、それが世界的な広がりの中で失ったことになれば、回復にはとほうもない時間がかかります。

    したがって、CSR的側面から見れば、その失地回復のための有効的な手段として、日本企業はCSRの取り組みを注目させていかなければならない立場に追い込まれてしまった一年ということになります。

    それでは、広報的な側面ではどうでしょうか?

    ■自らCSRを宣伝することのしさ

    この一年の、特に大手各社のCSR的な広告をウォッチして感じたことを一つだけあげるとすれば、日本でCSR広報をするためには「自社を自社の広告で褒めてはいけない」ということです。

    これはCSRに限りませんが、国内と海外とではCSRの広報手法は全然違うやり方をすべきで、世界で日本が交渉下手な最も大きな要因として、沈黙や陰徳を美徳としたり、曖昧を好むということがよく言われます。これがCSRのカテゴリではより顕著だ言えます。

    例えば、数年前、トヨタがアフリカのエイズ問題に対して、ベンツやBMWなどよりも先進的に取り組んでいたことをご存知でしょうか?これはとても優れた取り組みであり、支援額にも飛び抜けていたのですが、ヨーロッパでさえほとんど知られていないことでした。その理由は、簡単に言うと広報の仕方が下手だったからです。

    少なくとも海外では大きな声で「私はこんな素晴らしいことをやっています!どうです?すごいでしょう?」と恥ずかしいくらいに叫ばなければ誰も認めてくれないという、残念な立証の一つです。

    ところが日本では、たとえ組織であっても、個人の場合同様、自らを褒めることを直接的に他人に対して行うと逆効果になるという社会なのだと痛感しました。そんなことを直球で言ってしまうと社会が斜に構えてしまうのです。(もしかするとそれほど会社というものに対する不信感が強いのかもしれません)

    CSRがブランドイメージに貢献できそうな分野であるが故にダメだという矛盾 た構図は日本社会独特の特異性なのかもしれませんが、日本においてCSRを広めていかなければならないという課題がある上でのこの現状だけは頭が痛い特異性です。

    それを打破するための手法として、二つの方法が有効だと思います。

    1)利害関係の少ない第三者から褒めてもらう形で周知すること
    2)本業の延長線上にあるCSR(特に社会貢献系)であること

    具体的には、今年の夏にボルビックが展開したキャンペーン「1L for 10L」がとても上手だったと思います。

    「1リットルのペットボトルを買うと、ユニセフのプロジェクトとしてアフリカで10リットルのキレイな水が生まれる」というわかりやすさに加え、自分たちが水の供給会社である、つまり本業とアフリカ支援とをつなげる形で上手に使い、イメージアップにつなげた広告と言えます。(もちろん売上も伸びました。)

    今年は、CSRにとってとても微妙な年でした。CSRの認知度が会社の不祥事という負の側面からクローズアップされたからです。CSRとはもっとプラス的要素の中で展開されてしかるべきものですが、それが、逆のほうから広がるということは残念なことでした。

    来年がCSRに取り組む企業にとって恵まれた年となるよう祈りつつ、来年、またみなさまとお会いできるのを楽しみにしております。

    ■ここがポイント■
    1.不祥事に始まり、不祥事に終わった一年
    2.CSRを周知しなければならない状況へと追い込まれた一年
    3.CSRはマイナス面からの認知ではなくプラス面で認知してもらうようにすることが来年の大きな課題

    ■こちらもぜひご覧ください—————————————
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