2008.01.24
「スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。
その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。
————————————————————
■企業はお金を出して当たり前?
前回の号では、数年前から目にする機会が増えた「協働」という言葉のうち、政とNPOやボランティア、いわゆる市民活動との「官民協働」の実態と問題について書きました。
今号では、もう一つの注目すべき「協働」である企業と市民活動との「産民協働」について考えてみましょう。
毎号の繰り返しで恐縮ながら、「CSRの広報には第三者を巻き込むことが重要」です。この第三者として、パートナーの役割を担うのが市民活動であり、これがうまくいった場合、それが「協働」と呼ばれるものになります。
先日、あるCSRの研究会で「またか・・・」という思いをしました。ある大企業のCSR担当者の方が自社の取り組みを発表され、その後、その内容について質疑応答するという内容でした。
その時、あるNPO関係者が、「一兆円も売り上げているのにも関わらず、市民活動に数百万円しか支援していないのはなぜか?あまりに少ない。もっと一億とか二億くらい支援すべきだし、この額が御社の社会貢献なのか? 」という質問というか意見をしました。
これは、あまりに企業というものの有り方を無視した無責任な発言で、失礼極まりないものです。
そもそもCSR的視点から言えば、市民活動を企業が支援しなければならないわけではないにも関わらず、残念なことに市民活動をされている方々の中には、このように考えている人たちが意外にも多いのです。
実際に、その企業のご担当の方の回答の冒頭に、「そのようなご意見はよくいただくのですが・・・」とおっしゃっていました。つまり、そのような意見をする人が他にもたくさんいるということです。
なぜこのような発言が出てしまうのでしょうか? 市民活動は「誰かのために何かお役に立つことをする」という崇高な活動ではなかったでしょうか?
■課題は「善意の甘えとだらしなさ」
実は「崇高な活動」であるが故にこのような発言が出てしまうのです。
私の所属する日本財団は、まさに市民活動に資金的な支援をすることをミッションの一つとしています。年間お付き合いさせていただく事業数は約4,000件、事業費は250億円になります。
それでも、全国、または海外への支援という規模感の中ではお断りしなければならない件数のほうが多いのです。そんな時、落選した団体から「うちみたいな良い活動にお金を出さないのはおかしい」とクレームを言われることもしばしばです。
そういう市民活動団体の方は、企業相手になると、「企業は稼いでいるんだから、良い事をしている自分たちにお金を出して当たり前だ」というあまりに主観的で稚拙なロジックを開陳することになります。
こんな団体の発言がまかり通るようでは、いつまでたっても市民活動はその社会的地位を上げることは無理です。
さらに、お金をもらった後も問題があります。それをどう使ったのか、きちんとした報告をし、説明責任を果たせる団体が少ないのです。
確かに、彼らの活動領域は目の前で倒れている人をどうやって救うか、というような世界です。したがって本当に時間は無いのですが、それでも、一円でも自分たちの活動に支援してくれた人がいたら、その方々が納得できる説明責任があるはずです。(お金を出した側が過度の説明を求めるというケースもしばしばあり、これはこれで大きな問題があります。)
私が全国を回りながら市民活動をされているみなさんの前でお話しをさせていただく際には、この部分を必ず強調します。さらに「同じ一万円でも個人からもらうのと企業からもらうのは違う」ということを説明します。
それができないなら自分たちのお金が許す範囲内で活動するしか道は無いのですが、そう思わない人たちもいるのです。ここには、「誰々のために○○してあげている」という、独善的な思考が見え隠れします。
このような組織と会社が「協働」するなど夢のまた夢です。
私が企画・運営の責任者をしているサイト「CANPAN(カンパン)」では、この市民活動における善意のだらしなさを払拭するため、市民活動の団体情報データベースの一覧表に情報公開度によって星が増えるというシステムを導入しました。これにより市民活動団体の情報開示度が一目でわかります。
■日本財団公益コミュニティサイト「CANPAN(カンパン)」団体情報DB■
http://canpan.info/dantai_list_view.do
市民活動側が社会に対して説明できるような情報公開と発信(報告も含め)ができるようになれば、会社のCSRを進める、広めるための第三者として、市民活動が素晴らしい活躍をしてくれるようになります。
逆に言うと、情報発信や公開がちゃんとできない市民活動団体とは組まないようにすることが重要です。
個人のお金ならそれにこだわる必要はないと思います。しかし、会社として協働を求めるならば、その部分は不可欠であり、それを市民活動側にもきちんと求めていただきたいのです。(それにより彼らも成長できます。)
実際には世の中では素晴らしい団体がたくさん活動しています。それを見極めてお付き合いすることで、自社におけるCSR広報の芽を大きく育てることができ、結果としてお互いがWinWinの関係になることができます。
その意味で、両者とも課題があるとはいえ、前号の「行政と市民活動の協働」よりも「企業と市民活動の協働」に、私は大きな可能性を感じています。
■ここがポイント■
1.CSR広報上重要な第三者として市民活動団体はベスト
2.市民活動は善意である故の甘えとだらしなさが課題
3.パートナー選びの市民活動団体のポイントは情報開示(発信)力
■こちらもぜひご覧ください—————————————
5万人メルマガ「Super広報術」にて「CSR広報の時代」を毎月配信中!
http://s-pr.com/mmag/index.php
————————————————————–
2008.12.25
2008.12.22
2008.11.20
2008.10.23
2008.09.24
2008.08.28
2008.08.07
2008.08.01
2008.07.24
2008.07.20
2008.07.10
2008.07.05
2008.06.20
2008.06.12
2008.05.26
2008.05.19
2008.05.03
2008.04.27
2008.04.21
2008.04.07
2008.03.28
2008.03.24
2008.03.10
2008.02.29
2008.02.27
2008.02.25
2008.02.11
2008.02.05
2008.02.03
2008.01.24
2008.01.20
2008.01.13
2008.01.12
2008.01.11
2008.01.10
2008.01.02
2008.01.01