• 2012.06.12

    ソーシャルプロダクトの未来

    エコ、フェアトレード、オーガニック、ロハス、エシカル、これらを標榜する商品はここ10年ほどの間に少しずつ社会に浸透し、現在も増え続けています。
    これらの商品の多くはソーシャルプロダクトというカテゴリに分類されます。

    何がソーシャルプロダクトと呼ばれるものなのか、少し乱暴ながら一言で言うと「社会との共存を目指した商品」と言えるでしょう。

    たとえば、公害を生み出すことと引き換えに売れる商品を作ったとして、それは持続可能でしょうか。一時的な利益は生むかもしれませんが、長期的にはそれに倍する損害を覚悟しなければならないでしょう。

    これは極端な例ですが、ソーシャルプロダクトと呼ばれる商品が生まれてくる背景には、ソーシャルではないプロダクトが世の中に溢れているという意識が消費者側にあります。

    これは、生産者側がそういうものを実際に作っているかどうかではなく、消費者側がそう思っているということです。

    私は講演などでトヨタのプリウスについて話すことがあります。プリウスは自動車業界では革命的なソーシャルプロダクトですが、注目されるのはハイブリッド車の先駆けとして低燃費やCO2の排出量が少ないエコ商品であるという点です。

    これは全くそのとおりですが、私はプリウスの本当の価値は「ハイブリッド車は高くても売れる」という、ビジネスとしてわかりやすい事実を他の自動車メーカーに突きつけたという点にあると考えています。

    プリウスがどんなに素晴らしいエコ商品でCO2の削減ができる車であったとしても売れなければ世界のCO2は減りません。そして、プリウスが爆発的に売れたとしても(実際に売れていますが)、世界の自動車産業全体から見れば一車種でのCO2の削減量には限界があります。

    しかし、プリウスが爆発的に売れたことによって、世界の自動車メーカーは自分たちもこのような商品を作らなければ競争力を失うと考え、結果的に自動車業界全体がエコ自動車開発とその競争へと舵を切ったのです。

    このパラダイムシフトを加速させた功績こそが、プリウスという車が果たした本当の社会的価値であると思うのです。

    ではここでもう一つの視点、消費者はなぜ他の乗用車よりも高額であるにも関わらずプリウスを選択して購入したのでしょうか? プリウスを購入する人達はエコに関心がある意識の高い人たちばかりでしょうか?

    そのような意識の高い人も当然プリウスを買うでしょう。しかし購買者の多くは、ガソリン高騰という社会的背景も手伝い「低燃費でガソリン代が安く済む」という経済的ベネフィットに魅力を感じ、車両価格と天秤にかけた結果としてプリウスを選択したのでしょう。

    つまりプリウスは「エコだから、ソーシャルプロダクトだから、売れたのではない」ということです。

    今、世の中には多くのソーシャルプロダクトが生み出されています。それらに魅力を感じ購買する層も増えています。しかし、一つの帰結として、それらのプロダクトはソーシャルだから売れるのではなく、安全な食品、高品質な製品、優れたデザインなど、消費者にとって価格に見合うだけの魅力があるからこそまず売れるのです。

    そして、ソーシャルプロダクトは、その先に「結果としてソーシャルなインパクトを与える」という付加価値を持っているからこそ素晴らしいプロダクトなのです。

    そのようなポテンシャルと付加価値を持つソーシャルプロダクトですが、社会的にはまだまだ過渡期です。しかしながら、今後これらは自然と磨かれていき、社会的価値を加速していくことは間違いなく、ソーシャルプロダクトの先に新しいマーケットが広がっていくということも間違いありません。