• 2005.09.15

    君こそ英雄

    世の中には、無名の英雄がたくさんいます。
    そんな方々をちょっと紹介したいと思います。

    今回はその第一弾、災害現場で働いていた自衛隊のある方のお話し。

    1995年に起こった阪神・淡路大震災は多くの人たちの命を奪いました。
    そして生き残った人たちからは大切な人やそれまでの生活を奪い、場合によっては人生を変えられてしまいました。

    災害後に現地入りした自衛隊は現場で過酷な労働を続けていました。終日にわたって黙々と瓦礫を片付け、生存者を探し、遺体を収容し、被災者の生活確保に働いていました。

    そんな作業を終えた夜、冷え込む夜空の下で焚き火を囲んで皆で食事。

    「夜、眠れますか?」

    疲れた顔の自衛官が訊いてきます。

    「昼間、かなり動くんで、夜はかなりぐっすりです・・・」

    それを聞いた彼は、「いいですね・・・私は眠れなくて」と言う。
    昼間の作業で疲れきっているはずの彼はなぜ眠れないのか?

    「昼間はね、作業をしてますよね。精一杯やってるから、もし下敷きになった方の遺体が出てきても納得がいくんです。だけど、夜は作業が止まる。この寒い夜の中で今も瓦礫の下で私たちの助けを待っている人がいたらと思うと眠れないんです。だってこの瞬間に死んじゃうかもしれないんだから。明日出てきた遺体はそうなんじゃないかって思うんです。」

    『あなたはどこまで人がいいんだろう、誰もが余裕を失っているこの被災地で、どうしてそこまで人を思いやることができるんだろう・・・』

    彼に励ましの言葉をかけたいと思ったが、あまりの感動に言葉が出なかった。

    自衛隊という制度云々ではなく、こんな人たちががんばっている自衛隊とその活動を認めてあげたいと心底思った。

    あれから10年、災害が起きるといつも、彼は現場に行ってるだろうかと思う。

    敵と戦ったことのない自衛隊の中に、人の命や生活を命がけで助けようとする多くの英雄がいる。
    それは敵をやっつけることなんかより、どれほど尊いだろう。

    日本人はもっと彼らの活動を認めてあげて、彼らを同じ日本人として誇りに思っていい、といつも思う。

    そして、あの英雄たちとの出会いがなかったら、他にやりたいこともあったし、今、自分は日本財団にいないのではないかと思い、間接的ながら、自分もあの震災で人生を変えられた一人かと、ふと思うのです。

    当時の自衛隊のステキな活躍はこちらからどうぞ。