2007.07.30
■北海道の食肉偽装事件を考える
また、ある会社の考えられないような実態が明らかになりました。牛肉と偽って豚肉を混ぜるという組織ぐるみの詐欺行為を発端に、様々な実態が明らかになる連日のマスコミ報道、「もういいよ」という方も多いのではないでしょうか。(今は中越沖地震の報道の影に隠れてしまっていますが。)
「食」の安全を守るという観点から見ると、この会社が行ってきたことは許し難い行為です。おまけに「安い商品ばかり買う消費者にも問題がある」、「表示さえしておけば問題なかった」と発言することができる社長のメンタリティの低さにはそれ相応の厳しい法的、あるいは社会的制裁があってしかるべきと思います。
その一方で、「もったいないという意識があった」というコメントもしています。化学調味料の大量混入などを行っていながら「もったいない」も何もあったものではありませんが、私はこの社長のコメントの内、この部分は真実だと思います。
つまり、目の前で日々食べられることなく捨てられていく食肉を見て、「なんとかこれを再利用できないか」と考えることはとても重要なことだと思うのです。今でも世界のあちこちで数分に一人とも言われる人々が餓死していきます。
飽食国家日本は、その自給率が4割しか無いにも関わらず、日々食べ物を無駄にし続けています。このような社会が長続きするでしょうか? 若干宗教的ですが、食肉となる多くの牛や豚が、食べられることもなく、無駄に捨てられていくために命を落としているという現実。
食肉業者の一人、しかも社長として、彼がその肉を何とか捨てずに活用したいと考えたこと自体は非常に大切なことです。しかし、彼が現在置かれている立場へ自分を追い込んだ限界はこの先にありました。
■食肉業者としてのCSR
毎日、まさにゴミとして捨てられていく食肉を見ながら、社長がすべきことはなんだったのでしょうか?
間違っても腐臭がしはじめた肉を他の肉と混ぜてわからないようにすることではなかったはずです。
悪いほうのノーベル賞とまで言われるアイディアを生み出す発想力、これは誰にでもできることではありません。(やられても困りますが・・・)彼がすべきは、悪いアイディアを生み出して実践することではなく、この実状を変えるためのプラスのアイディアを、CSRとして実践することだったはずです。
私は精肉のことは詳しくありませんが、人には供することができなくなった食肉であっても、他の方法で無駄にしないサイクルを他業種を巻き込めば作れたように思うのです。
それを食肉の現状として世に訴え、肉のリサイクル的な発想でモデル化すれば世の中の注目するところとなり、会社の信用度もアップしたことでしょう。
同業者から「最後のごみ箱」などと蔑みを持たれた状態から脱却すらできたかもしれません。
もちろん狂牛病のように、共食いをさせるようなことをしてしまうと、それはそれで他の問題を引き起こす可能性もあり、決して簡単ではないでしょう。
しかし、精肉業者として生活の糧を得ている人間は、それを無駄にしないための仕組み作りに努力することは 行ってしかるべきであり、責務と言えます。
バブルの崩壊によって傾いた会社を維持し、状況を打開するために、悪いこととは知りながらも手早くできる消費者への裏切り行為に走ったというのは許されざることですが、当人は「社員を食わせていくためにやむを得ずやってしまった」という感覚で止まっているでしょう。彼の限界はここにあったと言えます。
結果として、従業員をその何倍ものマイナス利子付きで放擲することになった。
従業員の中には、仕事の中で自分たちがしてきたことへの呵責にこれからも心を痛め続ける人もいるでしょう。(マスコミがそれを煽っている状況も見るに堪えない面があります。)
そして、経営者として彼が最悪なのは、ここに至ってもまだ誠意が無いことです。おそらく彼にはマスコミを通した先にいる消費者や社会が見えていないのでしょう。まさにCSRとは対極にいる経営者の見本のような人です。
次号では、このような経営者にならないために、「誠意」の伝え方について考えてみたいと思います。
■ここがポイント■
1.「捨てるはゴミ」、「使えば宝」の転換で社会から注目の種
2.自社だけでなく業界全体をも考える企業にはステイタスが付いてくる
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