• 2007.11.19

    市民から評価されるCSRとは?

    スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。

    その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。

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    ■市民は「CSR」を知らない?!

    前回の号で、日本初の市民が選ぶCSR大賞のことを書きました。その栄光ある第一回のグランプリ受賞企業は「サッポロホールディングス株式会社」(以下、サッポロ)です。CSRという分野では初めての受賞ということでした。

    この授賞式の模様は下記のURLでご覧いただけますので、ぜひご一読いただければ幸いです。

    ■「CANPAN 第一回 CSR プラス大賞」授賞式詳細はこちら■
    http://blog.canpan.info/csr2007/

    このコラムで何度も書いていることですが、CSRは企業が求められていることではあるものの、これらに取り組むことは大変なことです。その大変なことに取り組んでいる企業を「市民が褒める」ということを形で表したのがこの大賞です。

    市民が褒める企業のCSRは、すなわち「市民に受け入れられるCSRとはどういうものか?」、「関心の高いCSRはどういうものか?」を端的に表現したものになります。

    サッポロがグランプリを受賞した背景として、当然のことながら情報公開度が高いことはベースとしてあるものの、それに加え、市民の側から純粋に企業への応援という側面が強かったことは否めません。

    それは、投票時にサッポロに対して寄せられた市民のコメントから明らかになっていますが、やはりサッポロのようにB to Cの企業のほうがどうしても市民からは身近に感じられてしまうということで、来年以降の大賞の課題です。

    これらは、見せ方次第で工夫の余地がありますが、問題は、2万を超える投票者数の70.4%の方が「CSRという言葉をこの投票で初めて知った」と回答していることです。

    つまり、ノミネートされた33社の中から自分の好きなCSRを行っている企業を選んで投票するというアクションを起こしてくれるような方ですら、「CSR」という言葉が全く身近ではないということです。

    毎日のように新聞紙上に掲載される「CSR」という文字は、CSRに関心を持つ方々には届いても、市民にとっては関心を持てない言葉の羅列であるということを証明した一つの結果とも言えます。

    企業の方とお話しをさせていただくと、「CSRというアルファベット三文字がよくわからない」ということをよく言われますが、これはそのまま市民にとってもそうなのだということをあらためて確認でき、日本にCSRが定着する上で根源的かつ最大のネックであるという思いがさらに強くなりました。

    かといって「企業の社会的責任」という言葉はあまりにもCSRの持つ一側面だけにフォーカスが当たり過ぎており、企業の積極的な意思が入る余地がありません。本当のCSRは企業が社会に受け入れられて共に繁栄するためのキーなのですから、「責任」だけでは不足もいいところです。

    それ故に、企業理念であるとか、企業のCSRに対する具体的な取り組み自体を広報していくことがCSR広報という視点から見ると最も重要であるということになりますが、その場合、CSRという文字を使う必要もないかもしれません。
    (「CSR」を知る方のために併記がベターですが・・・)

    一方で、市民は「CSR」という言葉を知らなくても、このような投票を行うモチベーションを持っているという事実は注目すべき結果です。これらを踏まえアンケート結果をもう少し掘り下げて見ていきましょう。

    ■市民とは誰か? 

    社会、世論、市民、そして機関投資家など、影響力が高そうなこれらの言葉には具体的な顔というものはありません。実体が非常に見えにくいのにも関わらず、無視しておけないこれらを把握する一つの手法が統計です。

    統計学的には、サンプル調査で100の単位でのアンケート結果でもってマクロとしての動向を表していると言えるそうですが、そのサンプル数が多ければ多いほど実態に近づくことは言うまでもありません。

    市民が選ぶと銘打った「CANPAN 第一回 CSRプラス大賞」の目標投票数は1万人でしたが、結果は2万人を超えました。したがって数的には「市民が選んだ」と言って間違いではありません。

    次の問題は、「その投票者はどのような属性を持つ人たちなのか?」ということです。これを見ていきましょう。

    まず男女構成比は、このようなアンケートでは通常女性の比率が高い特徴がありますが、今回は「男性58.4% 女性41.6%」でした。これは、CSRに関心のある人に絞って実施した場合、この比率はおそらく逆転することでしょう。それだけに面白い結果です。

    また、投票者の居住地分布は、ほぼ日本の人口分布と同じであり、全国から投票があったということを裏付ける結果となっています。

    年齢は、ウェブによる投票ということで、30代が最も多く34.0%、続いて40代が29.3%、20代と50代はそれぞれ0.1%違いの15.1%と15.2%でした。そして、職業は、会社員がトップで45.7%、専業主婦が16.5%で二位です。この結果は少し課題があるかもしれません。つまり組織票があり得るということです。

    実はこの組織票というものをどうするか、ということを私たちは課題としていました。大企業がドンと社員に「わが社に投票するように」とお達しを出したら、結果はあっという間に覆る可能性を秘めているのです。

    そこで、ドメインとして該当企業のドメインが大量に入ってきた場合、それがあまりに露骨な場合は、無効とする必要があるかもしれないと考えていましたが、実際にはそのような投票はありませんでした。

    その一方、ノミネート企業が社員に投票を促すこと自体は実はとても大切なことです。それは、私が以前からこのコラムで書いている「社員に自社のCSRを広報する」ことを実践することであり、CSR広報的には非常に有益なことだからです。

    広く社会に自社のCSRを知ってもらう前に、まず自社の社員がそれを正しく理 解していることがとても大切です。正しいCSRへの取り組みは間違いなく社員の働くモチベーションを上げますから、結果として売上の向上につながるのです。

    大企業にありがちなこととして、CSR部門だけがトップの意向を受けてCSRをがんばって進めている一方、広報部門などはCSRに全く関心が無いという皮肉な状態が放置されていたりします。

    その広報部門が自社のCSRの取り組みのCMを作るのですからピントがずれていても当然です。CSR部門の方は歯がゆい思いをされていることでしょう。

    したがって、このような投票に自社がノミネートされていることの周知も含め、その投票に社員を積極的に参加させることは理解のための手法として効果的なのです。

    その場合、社員は当然他のノミネート企業がどんなことに取り組んでいるのかを必ずチェックしますので、それによって自社の取り組みを理解すると共に、自社の取り組みを第三者的に比較し評価できることになります。

    市民に選ばれるということだけでなく、このきっかけづくりを提供できるこは、今回の大賞の意義の一つと言えるかもしれません。そうなると「地方」と「中小企業」を応援するということが難しくなるので、これはジレンマですが、そのような状態があった場合、工夫の余地が大きいと言えます。

    話が少し逸れてしまいましたが、続けてその企業を選んだ理由を見てみましょう。これはやはり「取り組みに共感できるから」がダントツの34.7%でしたが、その他の結果として「イメージが良くて信頼できる企業だから」が二位の19.5%でした。

    投票者が取り組みをきちんと評価している一方、イメージによる信頼というものにも重要なファクターがあることがわかります。昨今のブランドを持つ企業の不祥事があってなお、市民はまだまだ信頼を置いているということを胆に銘じることが大切であるようです。

    次号以降では授賞式に臨んだ各企業の皆さん(特に地方から応援されてノミネートされた中小企業)の事例を交えながら、分析結果をさらに書いてみたいと思います。

    ■ここがポイント■
    1.市民の70%は「CSR」という言葉を知らない!
    2.自社の社員に投票させることは間違っていない
    3.市民は「取り組み」をきちんと評価している

    ■こちらもぜひご覧ください—————————————
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