2007.10.22
「スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。
その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。
この号は、多くのみなさまから反響をいただきました。
本当にありがとうございます。
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■CSR報告書のおさらい
みなさんの会社では、「環境報告書」または「CSRレポート」、最近では「サスティナビリティレポート」などと呼ばれる報告書を毎年作成されているでしょうか?
私の所属する日本財団が運営するサイト「CANPAN CSR プラス」では、東証一部上場企業(約1700社)に対し、報告書を作成している場合は、それを送っていただけるように依頼、送られてきたそれらの報告書を48の項目でチェックし、結果をデータベースで公開しています。(自主的にご登録されている企業もあります。)
東証一部上場企業では1700社中600~700社くらいが実質的な報告書を作成しているというのが現状です。そして、世相を反映し報告書を作成する企業の数は年々増え続けています。
ここで、ここ20年間の日本企業のCSR報告書の取り組みに関する経緯をざっくりとおさらいしてみましょう。
そもそもの発端は、海外の機関投資家を含む投資家からの「環境報告書の提出依頼」でした。つまり「環境に配慮していない企業への投資はしないからその判断基準となる報告書を見せろ」ということです。
それまでも環境への取り組み自体は自主的に行っていた日本企業でしたが、それを報告書という形で第三者に公開するという発想はほとんどなく、このオーダーに面食らいます。しかし、国際的な企業であればあるほど、事態は深刻でした。これを機に日本企業が暗中模索の中で環境報告書を作り始めます。
一方、世界の動きは、ナイキやリーバイスが児童労働問題で叩かれたことなども影響し、「環境問題だけでは企業のリスクを判断できない」として、「CSR(企業の社会的責任)」という形での報告が求められ、一気に守備範囲が拡大、日本にも波及してきました。
この場合の企業のリスクとは、投資家にとってのリスクです。つまり不祥事などで一気に企業ブランドが傾き、株価が急落してしまうようなリスクを潜在的に持っている企業への投資を避けることを指します。「CSR報告書」は投資先として妥当かどうかの判断材料の一つとして有効なのではと期待されました。
そして現在、投資家は自分たちの投資リスクの回避だけでなく、社会的に見て優れた企業を応援するべきだという動きがあり、それを国連も後押しするなどして注目されています。これはSRI(社会的責任投資)と呼ばれています。
欧米では、このSRIの投資額が300兆円とも言われています。つまり社会のシステムの中に、CSRに取り組む企業を支える基盤がすでにできあがっているのです。社会が企業のCSRを支えてくれるならば企業はCSRにも積極的に取り組むことができます。
それに対して日本のSRIは3000億円程度と言われており、欧米に比べてわずか0.1%にすぎません。これでは、日本企業にとって「CSR=コスト」だと実質的に考えざるを得ないのも無理のないことです。
そんなCSRを取り巻く環境の変化の中で、投資のための判断材料として「CSR報告書」は役に立っているのでしょうか? 答えは「No」です。
■帯に短したすきに長しのCSR報告書
報告書の作成は、当たり前ですが、会社の規模が大きくなればなるほど、業務が多岐にわたればわたるほど、コストがかかります。そのコストに見合うだけの何を求めて報告書は作られているのでしょうか?
コストだけで判断すべきものではなないというご意見も踏まえながら、結論から申し上げてしまうと、今、日本で出回っているCSR報告書の多くは「帯に短したすきに長し」状態です。
つまり、投資家がその報告書でもって、投資先として選定できるような濃度のある報告書はほぼ皆無(私は読んだことがありません)であり、社会が理解しやすいような読みやすい内容になっている報告書はとても少ないのです。
ということは、誰がその報告書を読んでいるのでしょうか? それば一言で言うと「CSRの専門家」ということになります。例えばその会社の業種とCO2の排出量を見て、その多寡が判断できてしまうような人です。このような方が世の中に何人いるのでしょうか?その方々に何を理解してもらおうとしているのでしょうか?
現在、各社が作成している「CSR報告書」というものが持つ最も根本的で困難な課題がここにあります。
「コストをかけて作っているのにそれはないだろう・・・」と思われた方がいらっしゃったら、ぜひ先述の「CANPAN CSR プラス」の48項目を自社のCSRに当てはめ、実際の報告書の内容だけで48項目が全て埋まるかを試してみてください。
実は、この48項目に回答するだけで、今、各社が提供しているCSR報告書と同じようなレベルの情報公開(または発信)はできてしまいます。(その元となるデータ作成はきちんと作らないといけませんので、ここは時間と労力が必要です。)
実際に私の所属する日本財団では、報告書の提出などの依頼の際に「報告書は作成しておりませんが、CANPAN CSR プラスに登録し公開しているのでそちらをご覧ください」と回答しており、報告書そのものは作成していません。
環境に配慮するという意味もあり、CSR報告書をPDF化してウェブ上で公開している会社も増えていますが、PDFを作るよりもCANPAN CSR プラスのほうが作る側にも読む側にとっても簡単です。また、他社との比較も容易であることから、CSRに関 心の高い多くの方が参照されることもあり、費用対効果としては最も高いものの一つといえます。
一方で、明確な目的意識を持ってCSR報告書を作成されることはとても意味があることです。
例えば、CSRは自社の社員にこそ理解させなければならないという視点で作るなら、極端な企業例ですが、トヨタのような一つの町ほどの人たちが働く企業が、CSR報告書を従業員のために作って配布するだけで10万冊規模の報告書が出回ることになります。
これは立派な広報戦略でもあります。報告書に求められるものが社会の要求と共に変わりつつある中で、単に「CSR報告書を出せばいい」という時代はすでに過去のものであり、報告書は、企業ブランドの醸成とも絡んだ企業戦略の中で作成するものでなければ作る意味はありません。
これからCSR報告書を出さなければならないとお考えであれば、ぜひそのあた りを加味した上でお作りになることをおすすめします。
■ここがポイント■
1.CSR報告書はこの10年で大きく変わってきた
2.CSRに必要な48項目が埋まるか試してみましょう
3.組織戦略上に乗っていないCSR報告書なら作る意味なし
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2007.10.08
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■こんなCMだけはしてはいけない見本
ご覧になった方も多いと思いますが、最近、ある生命保険会社が「森林保全活動を通じて環境問題に取り組んでいます」というCMを頻繁に流していました。
生命保険会社は、過日の様々な問題の解決と社会的信用回復に向けた施策を打っていかなければならない状況にあり、このCMもその一環として莫大な広告費をかけて展開されたものでしょう。
このCMについて、CSRのセミナーに参加していた大学生に聞いたところ、「見え見えでかえって信頼できない」、「今のこのタイミングで生命保険会社が環境保全の取り組みをCMで流す意味がわからない」という回答が返ってきました。
一連の生命保険会社の問題について快く思っていない人であればあるほど、このような感想を持ってしまうことでしょう。つまり、莫大な広告費をかけて、社会にマイナスイメージを植えてしまうという期待とは全く反対の結果を引き起こしてしまっています。
CMで言っていることが間違っているわけではありません。環境問題を自分たちの問題として考え、それに企業として取り組むことは大切なことで評価に値します。しかし広告という目的から結果だけをみれば、全くの失敗です。
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか? それは、一言で言うと 「浅薄な戦略性と目的意識のないままCSRを安易な形で自社の大切な広告に使ってしまったために起こった」のです。
CSRは、会社とそれを取り巻く社会との信頼の上に立脚する大切なものです。
したがって、その会社が社会の中でどうあるべきかの戦略性と、それとがっちりと結びついたCSRへの取り組み、この二つの発露として展開される広告でなければ見る人には何も訴えるものにはらず、タイミングも悪く、内容もないものになってしまうのです。
先のCMは、広告代理店のアイディアをそのまま取り入れただけという可能性も高い気がしていますが、この広告を打つことを決めてしまう時点で、この会社のCSRへの取り組みが底の浅いものであることを証明してしまっています。
■CSR広告は難しくない
では、CSRを広告に取り入れることは難しいことなのでしょうか?
CSR広告が最もその効果を発揮するのは、企業のブランドイメージのアップを目的とした広告であり、この失敗例もそれを狙って作られたものでしょう。この目的意識さえはっきり持って作れば、さほど難しいものではありません。
しかし、そこには、先に述べたとおり、「社会の一員として自社があるべき姿」というものが描けていることが前提であり、それが整わないうちは安易に使わないほうがいいのです。
「そんなこと言ったって、あるべき姿を定義するのは難しい」と思われた方は自社の企業理念をもう一度思い出してください。そこにはおそらく回答がすでに書いてあるはずです。
先の号で「企業理念は社会との約束事」ということを書きましたが、CSRを広告に使おうとする場合、この約束事を守るために何をしているかを訴えれば、ミニマムの要素はおさえた広告が打てるということになります。
具体的には、「わが社の経営理念はこれです。○○○ ○○○ ○○○ この三つを果たしていくことをみなさまにお約束します。」これだけで立派なCSR広告です。(この経営理念が社会に受け入れられるものであるということは大前提です)
二年前の年末に松下電器が展開した「お詫び広告」、あのシンプルなCMに社会は松下の真摯さを感じて感動し、結果として売上高は前年同期比4%増の2兆3984億円、営業利益は47%増の1294億円を記録したのです。
このCMは、松下がブランドイメージをアップさせようと思って展開したのではなく、自社の企業理念から判断して、なすべきことをしただけにすぎません。
しかし、結果は松下ブランドを大きく躍進させたのです。
つまり、CSR広告を展開するならば、まずは自社が社会の中でどのような役割を担い、それを果たそうとしているかをベースとして、それを達成するために社会に何を理解してもらいたいかをデコレートすればいいのです。
それは広告の持つ意味を「商品を売るためのもの」と定義するならば、「自社の経営理念とその実践」を商品として売るためにどういう広告を打つか、と考えるとわかりやすいかもしれません。
■ここがポイント■
1.せっかくのCSR広告が会社のマイナスイメージづくりに貢献
2.CSRの広告は社会との信頼関係の上でしか成り立たない
3.CSR広告とは企業の理念と実践を商品として売る広告である
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2007.09.10
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■見えにくいトップの仕事や考えをブログで伝える
私の勤める日本財団の会長である笹川陽平は、経営者がブログを書くことなど社会的にはまだまだあり得なかった昨年のはじめから、ブログを書き始めました。そして、日本財団で働く職員へもブログを書くことを奨励しました。
■日本財団 笹川のブログ■
http://blog.canpan.info/sasakawa/
その際、「君たちの書くことについては、私が責任を取るから思う存分やりなさい。」と職員に説明しました。職員への信頼と心胆が座っていなければできない発言で、『すごいトップだなぁ・・・』とあらためて思ったのを覚えています。
日本財団は、「日本財団公益コミュニティサイト『CANPAN』」というウェブサイトを2005年6月に立ち上げ、そのウェブサイトのサービスの一つとしてブログサービスを提供しています。これは、その頃の話です。
このサービスは「CANPANブログ」と呼ばれるものですが、全国で活躍するNPOやボランティアの方々が様々な情報をこのブログによって公開しています。
今まで水面下でなかなか実態が見えにくかった市民活動の現場の声が、まとまった状態で世の中に発信されはじめたのです。
これは、市民活動の世界でも画期的な出来事であり、たとえば、先の新潟の地震の際には、一早く現地入りしたボランティアの方々が現場の状況をCANPANブログで配信していました。
私たちは、このようなNPOやボランティア、または財団法人や社団法人など、社会にその存在は知られているが、実際に何をしているのかイメージしにくい団体こそブログで情報を発信し、理解者を増やすことが重要であると考えています。
それは、ブログというツールが持つ特徴である、「書く人の顔が見える」からです。それを会社のトップと置き換えた場合、そこで働く社員は、トップの生の声をいつでも知ることができるようになり、社員の中にトップの考え方の理解者を増やすことができることになります。
■トップのブログで社員のマインド変革
昨年、ワタミグループの渡邉美樹社長にお会いした際、「私は社員にワタミのマインドをことあるごとに話している、ことあるごとに何度も何度も。それでもここまで組織が大きくなるとなかなか伝わらない。」ということをおっしゃっていました。
企業のCSRはお題目では意味がありません。いくら良い事を言って実践しようとしても、そこに心がなければ逆効果になることすらあるのがCSRというものが持つ特徴です。
なぜなら、CSRは企業の善意の心と、それに反応する社会との信頼関係で成り立っているからです。それを裏切る企業を社会は許しません、スポーツ紙があり得ないことを一面に掲載するのと日経新聞が同じ事をするのとでは社会の受け取り方が全く違うのと同じようなものです。
自社のパンフレットを作る時、経営者が企業の理念を語る場面がよくあります。その場合、経営者は、自社にとっての理念が大切な社会との約束事であるこを意識されているでしょう。(最近はそうでもない企業が多いようにも見受けられますが、そのような企業は結果的に淘汰される時代です。)
では、それを従業員は理解しているでしょうか?企業理念は学校の校訓やお経のようなもので、とりあえず書いておけば収まりがいいかなというくらいで現場は終わっていないでしょうか?
企業がどこへ向かうべきかを示すのは経営者の役割ですが、それと共に自社を変えたいと思った時、トップ自らがブログで社会に自分の考えを生の声で発信することは、選挙の公約と同じで、自分の本気度を示すバロメーターです。
企業のトップが、もちろん実名で、インターネットに公開する考えや企業理念への思い、そしてCSRへの思いの本気度や真剣さは、自社で働く社員にこそ響くものなのです。
私も含め、日本財団では、会長のブログを職員が読み、会長の考えを理解しようとしています。
企業のCSRを組織一丸となってやっていきたいと思ったなら、自社の社会の中での役割や位置づけについて、トップが考えていることをブログで情報発信されてみることをおすすめします。その結果に驚かれることと思います。
■ここがポイント■
1.NPOやボランティア、顔が見える情報発信としてブログが有効
2.CSRは企業の善意の心と社会との信頼関係で成り立つ
3.トップ自らのブログは組織に変革をもたらす有効ツール
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2007.08.27
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■市民活動と自社のCSRとの協働
前回の記事で、CSRを展開する中で誠意を伝える手法として、自社だけではなく第三者を巻き込んだCSR活動を展開し、それをお互いに広報し合うことがおすすめと書きました。今回は、その具体的な方法について書いてみます。
皆さんは「協働(きょうどう)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
この聞き慣れない言葉は、最近、特に行政が「協働」を掲げ、市民と一緒に作る施策を展開しています。一言で言うと言葉そのままに「何かを一緒に協力して行う」ということです。
行政とNPO法人やボランティア団体など市民活動との協働は、はじまったばかりということもあり、いくつもの問題を抱えてはいるものの、全体的な傾向としては歓迎すべき流れです。
そのような中、企業もまたCSR活動の一環として市民活動との「協働」を行 いはじめています。
これは、従来のようにNPO法人やボランティア団体にお金を出して「後はよろしく!」と任せっきりにする話ではありません。
寄付を行った企業の担当の方がおっしゃるのは、「そういう団体に寄付しても半分くらいは何に使われたのかよくわからない」というコメントです。
これは市民活動団体側にも問題があり、いただいたお金をどのように使ったかをきちんと情報公開するという認識が低いために起こります。
これは、日本の市民活動の社会的ステイタスが、欧米のそれと比べて低い理由の一つにもなっていると思われます。つまり「私はいいことをしているんだからお金を出すのは当然、寄付は善意のお金なんだから情報公開なんてする必要ないでしょ。」という態度です。
これでは、社会や企業からの継続的なサポートなど受けられるはずもなく、自ら支援者を減らしていると言っても過言ではありません。
それはそれで改善されるべき問題ですが、その一方、企業もお金を出すだけではなく、自分たちが持っているノウハウを提供し、市民活動の団体と一緒に社会的課題に取り組んでいくということが求められています。それが「協働」という言葉に集約されます。
それは結果的に自社のステイタスを上げ、同時に地域の活性化などにもつながるという「社会の良いサイクル」を作り上げるCSRの魔法の杖です。(ハリーポッター風)
■苦手なところを補完し合ってできるCSR
企業は、組織力もあり、お金を稼ぐことはプロフェッショナルですが、非営利的な活動は苦手です。
一方、市民活動団体は、社会貢献マインドは高いですし、非営利的な活動は得意ですが、組織的な動きやお金を稼ぐことは苦手です。
従来までは、これらの二者が手を組んで何かをすることは、社会的にあまり必要性を求められておらず、せいぜい資金的な支援があるだけでした。
しかし、今はその二者が手を組むことで、とても重要な社会的役割を果たすことができることがわかってきました。まさにCSRと直結することであり、企業として積極的に取り組むだけの価値のあることです。
なぜなら、CSRの効果的な広報手法として、これほどわかりやすいことはなく、企業のCSRをアピールするのにもベストだからです。
例えば、地域情報を発信しているNPO団体があります。行っていることはその町の紹介をフリーペーパーやウェブで発信するという活動です。
さらにすごいところでは、京都市にある「三条ラジオカフェ」というNPO法人は、市民が運営するラジオ局で、365日ラジオ番組を提供しています。
▽三条ラジオカフェ URL http://radiocafe.jp/
このような活動をしている団体とタイアップ(協働)し、町おこしの活動として地域活性化のための様々なプロモーションまでを一緒に行った場合、彼らは自らの活動の一つとして、このタイアップ活動をあちこちで広報してくれます。
すると、自分たちは何も広報しなくとも、第三者によって自社のCSRが広報されていくという流れが作られることになります。
そして、こちらでは、「私たちはこのような団体を応援しています。」と広報するだけで、「私たちのCSRとは○○です。」と説明するよりも具体的で街全体に対して好アピールかつわかりやすいCSRの広報になります。
これらの相互広報による効果は、自社のCSRを単純に広報していくよりもよほど効果があり、さらに地元が活性化して潤えば、自社も元気になれるというサイクルを作ることができるのです。
■ここがポイント■
1.企業と市民活動との「協働」が社会を変える
2.「協働」によるCSR活動は社会に理解されやすい!
3.相互広報の効果を侮るなかれ
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2007.08.16
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■日本ではまだCSR=コストという壁を越えられない
今回は、ちょっと視点を変えたCSR広報を読者のみなさんと一緒に考えたいと思います。
前回の号で、ソニーが約4000社の調達取引先企業に対し、CSR監査を義務付けることを発表したことを書きました。取引先としてふさわしい企業かどうかをCSRという視点から判断される時代の到来、それはCSRに取り組んでいない会社は取引交渉の土俵にすら上げてもらえないということです。
「CSR=コスト」と考えている企業にとって、この現状は憂うべき状態です。
「またコスト要因が増えた、これじゃあどこから利益を上げたらいいのだ」という嘆く経営者の方が日本にはたくさんいらっしゃることでしょう。
日本の多くの企業にとって、CSRに対する認識はまだこの程度でしかなく、この状態が続けば、日本の未来は決して明るいとは言えません。
なぜならCSRがコストという状態では、世界に取り残されていくことが明白だからです。ご存じのとおり、環境問題や世界経済の行き詰まり感は危機的な状況にあります。それに対して様々な手を打っていく必要性が世界中で叫ばれ、実践されています。
欧米では、これらの問題に取り組む企業を評価し、応援していくための投資、すなわち社会的責任投資(SRI)の規模が350兆円にも上ります。それに対して日本のSRIの市場規模はなんとわずか0.3兆円です。
この現状が、日本企業をしてCSRがコストと言わしめる原因のわかりやすい比較です。つまりCSRに真面目に取り組んでいる企業を投資家が評価する仕組みが日本にはないのです。一方では、CSRに取り組んでいない企業とは取り引きしないよと言われてしまう。
■社会に対してCSRを理解してもらうための団結広報
まさに責任だけ負わされてまったく受益がない状態を強いられているわけで、この状態が長く続いては、「CSR=コスト」というイメージはますます企業の常識として定着してしまい、本来は企業を活性化させるためのツールであるはずのCSRは会社のお荷物化するでしょう。
国が進めるワークライフバランスにしても、大企業から減った残業時間はそのまま下請け企業にスライドしているだけ、という指摘も決して否定できる状況ではありません。これでは一体何のためのCSRなのかという状態です。
「美しいCSRの理想論はもういい、こんな現状でもなおCSRに取り組まなければならないのか」という嘆きは当然でもあります。この、地球が置かれている自然環境と同じような危機的状況をどうすればいいのでしょうか?
ここに私は「CSR広報」の重要性を見出します。個々の会社が、それぞれ自社のCSRをどう広報していくかに取り組むことはもちろん大切ですが、企業界全体のためにCSRとは何かを世の中に周知する、具体的には、自社のCSR を広報する際に「なぜ私たちはCSRというものに取り組んでいるのか」を一緒に説明してほしいのです。そうすることで、CSRに馴染みのなかった人々にCSRの大切さを訴えることができます。
結果としてそのような企業が増えれば増えるほど、CSRは日本社会に理解されて根付き、投資や市民の消費行動の中で、CSR活動をしている企業を支えようとする動きが欧米同様に出てくるでしょう。
投資信託のメニューにも先ほどのSRI投資のメニューがたさくん作られていくでしょう。
そうなれば、CSRに取り組む企業を支える社会的システムも一気に充実してきます。それをトリガーとして、次はイギリスのように年金法が改正されるなど、こうした企業への支援が大規模に変わる動きへとつながっていきます。
■ここがポイント■
1.日本社会のCSRの認知はまだまだ低い
2.自社のCSR広報と同時に社会にCSRそのものを理解させる広報を!
3.社会の「CSRへの理解」なくしてCSRに取り組む企業への理解は無い
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