• 2008.02.11

    CSR広報を就活に利用

    スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。

    その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。

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    ■「人の役に立てる仕事」が一位

    雑誌「週刊東洋経済(2008年1月19日特大号)」をお読みになった方はご存知かと思いますが、特集として恒例の「就職ブランドランキング」が出ていました。

    この記事を見ても時流がはっきりと読み取れますが、学生は企業の存在意義そのものに注目しています。それは、収入だけではない、プラスアルファ部分に働く意義を見出そうとする若者の姿です。

    勝ち組負け組、持つ者と持たざる者、格差社会など、白黒を経済面だけでとらえようとする傾向が若い世代ほど強いように感じる昨今で、このような結果が出ることに違和感がある方もいるかもしれません。

    しかし、それは、凶悪犯罪が実際には減少し続けているのに、凶悪犯罪が増え続けているように感じるのと一緒です。メディアの情報の出し方による印象が実社会と乖離しているにすぎないということを物語っています。

    それはさておき、その中で最も注目すべきは、「仕事価値」という指標において、調査開始以来初めて、「人の役に立てる仕事」が一位になったことです。

    これを学生が「『CSR』に取り組む企業」という視点で選んだとは考えにくいと私は思います。なぜなら、一部の学生を除き、「CSR」という言葉はまだまだ学生に認知されていないと思われるからです。

    それでもなお、学生が「人の役に立てる仕事」というとても社会的な仕事に魅力を感じているのは本質的なことに目を向けている証です。

    そして東洋経済は「ベネッセコーポレーション」と「積水ハウス」に注目し、彼らが自社のCSR活動をうまく活用して学生に対してアピールしていると論じています。

    世界で最も早期にCSRが企業ブランド向上に役立つものと位置付け、戦略的にCSR広報を仕掛けたのは石油会社のロイヤル・ダッチ・シェル社です。

    それは有名な「ブレントスパー事件」に端を発するものであり、攻めのCSR戦略と言うより、守りのCSR戦略の結果が「吉」と出たものでしたが、その時に再構築された企業理念に盛り込まれた「トリプルボトムライン」などの理論が、現在言われているCSRを定義付けることになり、世界に広まりました。

    余談になってしまいましたが、上記の2社のように「CSR広報戦略」として学生の希求に応える形でCSRを見える形で打ちだしていくということは、自社を支えてくれるような有為の人材の獲得にとって非常に重要な戦略です。

    そういう人材は間違いなく「お客様のことを考えることができる人材」だからであり、そのような人材を多く持つ会社が伸びるのは言うまでもないことです。

    では、どのように打ち出していけばそのような学生の心に響くCSR広報ができるのかを検証してみましょう。

    ■企業理念と共鳴させる広報

    まず、大前提は、「学生はCSRという言葉を知らない」ということです。した がって、「わたしたちはCSR活動(企業の社会的責任)に積極的に取り組んで社会との共存をはかります。」というような「CSR」という言葉を前面に出した広報の仕方はNGです。

    さらに加えると、「CSR」という言葉を知っている学生であっても、「CSR」という言葉が持つ範囲は広すぎます。「百貨店」をブランディングするのと同じで、全方位的に自社が取り組んでいるCSRを漠然と周知することになるため、全く心に残らないのです。「何でもあります、どうぞ来てください」という宣伝に求心力が無いのと一緒です。

    せっかく学生はその会社が行っているCSRの本質的な部分に響いてくれるのですから、企業理念の中でCSRとがっちり噛み合う部分にフォーカスして、具体的取り組みとして見せることです。

    らに、その取り組みがどのように社会に役に立っているかを第三者を通じて紹介する形がベストでしょう。

    より具体的に言うと、その第三者は、「○○市在住のA子さん」ではダメです。
    ただのサクラかもと思われるのが関の山です。事実確認ができない第三者の意見ほどあてにならないものはないということは、最近は若い人ほど知っています。

    したがって、利害関係の少ない方や団体で、社会的に見える方を登場させることで圧倒的な説得力を持ちます。

    例えば先述の「ベネッセコーポレーション」は市民企業という自分たちの立ち位置の中で、事業を展開する香川県直島町の町長や観光協会の会長、地元の喫茶店、ボランティア団体などを通じて、自分たちの取り組みを紹介しています。

    これはベネッセが取り組んでいるCSR活動のほんの一部の紹介に過ぎませんが、この部分を際立たせて見せることで、客観性と信頼性に結びつけています。

    これらにさらにストーリー性を持たせるとさらに磨きがかかります。CSRは全方位性を持っているが故にわかりにくい、それを払拭するには、得意分野にフォーカスしてわかりやすくストーリー性を持たせて紹介することです。

    細かいテクニックとしては、それらを紹介した最後に「これらの私たちの活動は、一般的にはCSR(企業の社会的責任)と呼ばれるものかもしれませんが、その考え方は、私たちの企業理念に最初から入っています。」というような控え目なアピールが、より効果を持つかもしれません。

    これが効果を持つだろうと思うのは、最近の広告の傾向として、取ってつけたような自画自賛タイプのCSRの広報が多すぎるので、その逆を狙えるからです。

    自社の今後10年を見据えて学生の採用を行う上で、この「誰かのために役に立ちたい」と思っているマインドのある学生がエントリーシートを持ってきてくれるように、CSRを使って魅力ある会社であることをアピールしてみてください。

    ■ここがポイント■

    1.学生は企業の存在意義そのものに注目して就職先を見ている。
    2.学生へのCSRアピールでは「CSR」という言葉を極力使わない。
    3.CSRの取り組みの中で、最も自社が強いCSRの取り組みにフォーカスした内容をわかりやすいストーリーで伝える。

    ■こちらもぜひご覧ください—————————————
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