• 2008.12.25

    CSR、この一年を振り返る

    ■今年のCSR状況■

    先月の回で、「市民が選ぶCSR大賞」のことを書かせていただきました。
    今回は、その投票者が答えてくれたアンケートを元に分析をしてみたいと思います。

    ■第二回 CAMPAN CSR大賞 表彰式■
    http://blog.canpan.info/csraward_2008/

    今年のCSR大賞は、投票者が企業名などに左右されず、各社が行っているCSRの取り組みを評価できるような仕組みを導入し、結果として社員を大切にしている10名足らずの小さな会社、「有限会社 ワッツビジョン」がグランプリを獲得しました。

    ■有限会社ワッツビジョン■
    http://blog.canpan.info/csraward_2008/archive/34

    これはまさに今年のCSRを総括するものとして考えてよいと思います。
    日本における企業のCSRの取り組みは、CSRという言葉が意味する企業経営そのものの概念よりも、まず社会貢献という立ち位置から理解され、その後コンプライアンスや環境への配慮などに広がり、現在は一通りやりきった感が漂っています。

    しかし、これは大きな間違いで、足元である自社の社員へのCSRという視点がすっぽり抜けている企業がまだまだ多いのです。さらに言うと、そもそも社員への取り組みがCSRだという認識自体が不足している状態と言えます。

    これが来年、企業が積極的に取り組んでいかなければならないCSRの最後の領域となるでしょうが、それはまた、今後、詳細に検証していきたいと思います。

    今回、投票を行ってくれた市民2万人のうち、「CSRという言葉を今回の投票で初めて知った」と答えた人は実に72%にも上ります。

    投票者の職業の47%、約半数が会社員でしたが、それを踏まえると、この数値は社会人にとっても「CSR」という言葉そのものが浸透していないことを表しています。

    これは、昨年も同様の数値で、この1年、各企業のCSRの取り組みに対する熱意とは裏腹に、CSRという言葉自体は全く社会的関心事としてとらえられてこなかった、別の言葉で言えば、「CSRという言葉は市民が企業の取り組みを理解するための共通言語になってきていない」ことを意味します。

    CSRの持つ多様性や価値を考えると、この言葉が理解されていくというのは難しいような気がしています。したがって、もっとわかりやすい言葉との代替が必要なのだろうと常に思います。

    ただ、重要なことは、CSRという言葉は知らなくても、2万人が「良い企業を応援しよう」という今回の大賞の意義を受け止め、各企業のCSRの取り組みを読んで投票する、という行為を行ったという点です。社会は言葉ではなく、実態としてのCSRに確実に響いているのです。

    それでは続いて、性別や年齢、職業での違いを見ていくことにしましょう。

    ■男性「総合力」、女性「ワーク・ライフ・バランス」■

    グランプリを受賞されたワッツビジョンの取り組みが高評価だったのは特に女性層でした。それは取り組み自体が子育て支援という側面が強かったことが共感を呼んだようです。

    それに加え、女性が選んだCSR大賞という視点で見てみると、五位にサッポロホールディングスが入ってきますが、それ以外はすべて地方の中小企業で特にワーク・ライフ・バランスにエッジが効いている企業でした。つまり、女性の心に響くCSRは「ワーク・ライフ・バランス」がキーワードであると言えます。

    ただ、これに年齢という視点を加えると、同じ女性でも60歳以上の女性は関西電力など、総合的にCSRに取り組んでいる企業を支持しており、20代~30代の女性の傾向とは明らかな違いが見られたことも興味深い結果でした。

    子育てが終わった世代の女性の視点は、より大きな視点からCSRを見るようになっている、と言えるかもしれません。

    一方、男性が選んだCSR大賞は、一位が大阪ガス、二位が関西電力、三位が油伝味噌と続き、ワッツビジョンは四位と下がってしまいます。男性の場合は、総合的に色々な活動を行っている企業を評価する傾向が強いという結果になりました。

    そしてさらに、男性の場合、年齢差による投票企業のブレが少ないという点が女性との対比で見ると面白い結果です。

    職業別にみると、学生も総合的なCSRを評価する傾向が強く、パートやアルバイト、専業主婦はワーク・ライフ・バランス、そして会社員もワーク・ライフ・バランスという特徴となっていました。

    これらの分析結果から見えてくることは、CSR広報もただ漫然と広告を打ってもダメで、きめの細かいターゲットの絞り込みが非常に重要であるということです。

    B to Cの会社の場合、自社の製品やサービスの顧客層に合わせてそれを設定するというのが最も効果的なのはもちろん、さらに自社のCSRの取り組みの中でも何を見せていくかというエッジの効かせ方も大切だと言えます。

    これは、商品を売る時の広告と考え方的には同じですが、大きく違うのは、実際に物が売れたりという成果が見えないため、広告効果の測定が困難であるという点です。

    その意味で、このアンケート結果を各社の視点から分析して広告展開手法の着想を得ることはとても意味のあることだと思います。

    分析の詳細な結果については、今後、CANPAN CSRプラスというサイトでコラムとしてアップいたしますので、ぜひご参考いただければ幸いです。

    ■CANPAN CSR プラス■ 
    http://canpan.info/csr/

    ☆ここがポイント☆

    1.CSRという言葉自体の認知度は、この一年で全く上がっていない
    2.男性と学生はCSRの「総合性」、女性は「ワーク・ライフ・バランス」を高く評価
    3.CSR広報も商品の広告同様、ターゲットの設定と訴求する内容が重要

  • 2008.12.22

    学生の方からのうれしい質問

    学生の方からブログコメントに質問をいただきました。
    最近、スパムコメントばかりでうんざりしていたのでとてもうれしいです笑顔

    このような反響をいただけるのはありがたいことなので、こちらの記事のほうで回答をさせていただきますメモ

    【質問いただいた記事】
    失敗から学ぶCSR広報

    【質問内容】
    ————————————————————
    私たちは、現在CSRマーケティングについて論文を作成しています。インターネットで調査をしていくうちに町井さまのHPである「失敗から学ぶCSR広報」の「こんなCMだけはしてはいけない見本」を拝見させていただき、非常に興味を抱きました。それとともにその情報の背景などを知りたいと思い、今回コメントさせていただきました。

    以下の質問にお答え頂ければ幸いです。

    1、ブログに記載されている某生命保険会社とはどこでしょうか。
    2、セミナーに参加した学生の意見を取り込んでありますが、どのような学生で、何人くらいからの意見でしょうか。
    3、某生命保険会社のCSR活動を絡めたCMを失敗だと考えた具体的な根拠をおしえてください。

    よろしくお願いします。
    ————————————————————

    【回答内容】

    ご質問いただいた件、まず本記事のスタンスですが、「企業のCSRはどのように広報すればよいか」という視点から書いています。

    そのため、1.のご質問が答えにくく、CSR広報の記事を書く際の自分のルールとして、船場吉兆やミートホープのような明らかに罪悪である場合を除いて、褒める時は実社名で、そうでない時はできるだけ匿社名でということにしています。

    今回の場合、当生命保険さんは悪いことをしたわけではありませんので、実社名を公開するのは控えさせてください。

    2.につきましては、CANPAN CSR プラスというサイトのサテライトプログラムとして、CSRに関心のある学生の皆さんとダイアログを行っています。
    また、同じくCANPAN CSR プラスでは、東証一部上場企業1,700社のCSR情報を一覧化する調査を年一回実施しており、こちらにも調査員として学生の方に参加してもらっています。

    今回の話は、それらの学生の皆さんのコメントとしてもらったものです。
    ですので、ヒアリングの対象学生は「CSRに関心の高い学生」ということになります。

    ■CANPAN CSR プラス 企業のCSR情報データベース■
    http://canpan.info/csr_list_search.do

    ■CSRプラス 学生カフェ 第一回■
    http://blog.canpan.info/column/archive/32

    ■学生カフェ 第二回■
    http://blog.canpan.info/tankentai/archive/7

    3.は、この記事を書いた時点で、生命保険会社がCSR広報をする上で行うべきは、顧客に対して自分たちはこれからどのような社会的責任を会社として果たしていこうとしているかである、と考えました。

    なぜなら、生命保険会社は当時、不払いなどの実態が暴かれて責任を追及されている最中だったからです。

    そのような時期に「わたしたちは植林で地球環境に貢献しています」と大々的にCMされているのを見た顧客はどう思うでしょうか? 「植林の前にすることがあるだろう」と思うのは自明です。

    つまり、CSR的な視点で言えば、時期的には顧客との信頼関係の修復こそ急務であったにも関わらず、植林のCMはその関係修復のために何が果たされるのかが全く見えないものだったわけです。

    もし、この時期に顧客の気持ちを第一に考え、自社CMを関係修復やさらにはイメージアップにつなげようと本気で考えていたのであれば、こういう内容で植林のCMを打つはずがない。

    それらを含めて考えていくと、そもそもこれは企業としてのCSR戦略の一環としてきちんと考えて行われたCMではなく、単にトレンドに流されただけ、あるいは広告代理店の言いなりとなったCMであると私は判断しました。

    このようなCMにはCSR的な価値はありません。

    本記事中にも書かせていただきましたが、某生命保険が「顧客の皆さんが生きていく地球の、その環境を保全することこそ社命である」と立ち位置を置くのであれば、それはそれで批判されるべきものではありません。

    会社としての理念や一貫性もなく、CSR本来が持つ善意性を履き違え、単に「トレンドだから言っておかないとまずい」、「CSRを利用してブランディングしよう」というような下心のみの広報というのは、社会にとってもいい影響を与えるものではなく、もちろん自社のイメージアップにもつながらないものです。

  • 2008.11.20

    今年のCSR No.1企業が決定

    ■今年のCSR No.1企業が決定■

    昨年、第一回が実施された「市民が選ぶCSRプラス大賞」、今年は第二回目として2008年11月7日(金)に東京都港区の日本財団ビルにて表彰式が行われました。

    ○第二回 CANPAN CSR大賞 表彰式○
    http://blog.canpan.info/csraward_2008/ 

    CANPANによるCSR大賞のユニークな点は、

    1)市民が選ぶ(Webによる投票)
    2)大企業と中小企業が同じ土俵で勝負する

    という二点です。

    ○CSR大賞 実施方法詳細○
    http://blog.canpan.info/csraward_2008/archive/4 

    この場合、大企業というのは東証一部上場企業を指します。
    この東証一部上場企業のうち、CSRに関する情報の開示度が高い企業10社と、日本各地からノミネートされた中小企業10社の合計20社から市民に最も心に響いた企業の「CSRの取り組み」に投票してもらいました。

    ○CSR大賞ノミネート企業一覧○http://blog.canpan.info/csraward_2008/archive/57 

    この市民目線での投票の結果、全投票者の10%近い得票を得て、グランプリに輝いたのは愛知県でタイル業を営む「有限会社 ワッツビジョン」でした。

    従業員(正社員)がわずか10名弱の会社です。CSRの取り組みも大企業と比較にはならないほどささやかなものです。

    したがってCSRの専門家と呼ばれる方々による選抜であれば、おそらくノミネートすらされなかったかもしれません。

    そのワッツビジョンがグランプリに選ばれたポイントは何だったのでしょうか?
    以前、企業が取り組みたいCSRと市民が企業に望むCSRとには、ギャップがあるということを書きました。

    それは以前に環境gooが調べた調査結果からも読み取ることができます。

    ○環境goo 読者(市民)と発行者(企業)の優先順位の対比○
    http://eco.goo.ne.jp/business/marketing/er/enq04_6.html

    そのギャップを埋める、またはお互いの理想とする状態を可視化するためのシンボリックなイベントの一つとして、このCSR大賞を実施しています。

    その象徴的なワッツビジョンの受賞、主催者である私たちもその理由について深く考えるきっかけをいただけました。そして、ワッツビジョンが市民に訴求できたことと、今の日本企業が抱えている本質的な問題は、決して無関係ではないのです。

    ここに、自社のCSRの取り組みそのものをどうするか、そしてそれをどう広報するかのヒントが詰まっています。

    ■従業員へのCSRこそが求められている■
    ワッツビジョンのCSRの取り組みを紹介したページをぜひご覧いただきたいのですが、ワッツビジョンのCSRの取り組みは、実は他の企業と比べて突出して優れている、というわけではありません。

    ○有限会社ワッツビジョン○
    http://blog.canpan.info/csraward_2008/archive/34

    その中で、最も優れている点は、「従業員との約束」を経営者がきちんと果たしているという一点なのです。
    つまり、経営者が従業員に対して愛情を持って接し従業員を大切にしながら仕事を行っている、ただそれだけです。

    それは、逆に言えば、そのような当たり前のことができていない会社が世の中には多いということかもしれません。

    それを裏付けるデータは、CANPAN CSR プラスというサイトの企業のCSRの取り組みが一覧できるデータベースで見つけることができます。

    ○CANPAN CSR プラス データベース○ 
    http://canpan.info/csr_list_search.do 

    ここでは、1900社近い企業(メインは東証一部上場企業)のCSRに関する情報開示度と、その取り組み内容が48項目で一覧できます。この48項目の中で最も開示度が低い、または取り組みが弱いのが「従業員に対するCSR」なのです。

    それを徹底してやっている会社、それがワッツビジョンだったということで、企業の取り組みが最も遅れている部分と市民が企業に求めたい部分とのギャップ、それがそのまま投票結果に結びついていたのです。

    この受賞内容は、地元愛知のケーブルテレビをはじめ各メディアに取り上げられ広められます。また、今後、様々なところで引き合いに出されていくことでしょう。

    そして、結果として、ワッツビジョンという会社のブランディングにつながっていきます

    これこそが、CSR広報の一番スマートな形です。
    CSR広報は、自画自賛系なので展開が非常に難しいわけですが、それを嫌味なく最も効果的に行うために、利害関係の無い第三者に評価してもらう以上のものはありません。

    グランプリは、年一回しか選ばれませんので、自分たちの会社でそれを狙いたくても・・・ということになるでしょう。

    しかし、たとえば、商工会などが各地域でそのような賞を行政と組んで設定し実施することで同じような効果を創り出すことはできます。

    ぜひ、皆さんの地域でも同じような表彰の制度を作ってみてはいかがでしょうか?

    有限会社ワッツビジョンさん、グランプリ、本当におめでとうございます!

    そして、情報開示部門で金賞を受賞された大阪ガス株式会社さん、同じ部門で銀賞受賞、昨年グランプリのサッポロホールディングスさん、地域部門で金賞受賞の一正蒲鉾株式会社さん、銀賞のサラヤ株式会社さん、各社のみなさまも本当におめでとうございます!

    次回は投票者の市民の皆さんのアンケート結果について考えてみたいと思います。

    ☆ここがポイント☆

    1.市民が会社に望むCSRの取り組みは従業員へのCSR
    2.第三者に評価してもらうことがCSR広報の最も効果的な手法
    3.地域でのCSR表彰制度で地元企業を元気にする

  • 2008.10.23

    社員を巻き込むCSR

    ■全社的な取り組みの重要性■

    日を追うごとに企業が「CSR」に取り組むということが当たり前のように叫ばれるようになってきています。

    しかし、特にCSRの部門を持てるような大きな企業の担当者の方とお話しをしていて一向に変わらないのが、本音ベースで出てくる「社長はCSRに大乗り気だが、社内(社員)がついて来ない」という話です。

    「CSRはCSRの部門がやればいい」という空気が組織内で蔓延していて、何か協力を依頼すると「またCSR部門が仕事を増やした」と思われてしまうことが多々あるという実態は、社会的なCSRの高まりとは別次元のようです。

    これでは、いくら経営者が「わが社も社会の中で生きていくために責任を果たしていこう」と考え、CSRの取り組みに積極的になったとしても、その理念が途中で断絶し果たすべき成果が出なかったり、思っていたものと違うものになってしまうのは自明です。

    結果として、広報部門などがCSRっぽい広告を広告代理店などに依頼し、実態 とかい離した的を得ていない広報などを展開してしまうことが往々にしてあります。

    その場合、実態と違いますから、社員からは「わが社のイメージ広告は酷い。実態と全然違う。CSR部門は何をやっているんだ」などと不信感を増長するような悪循環の原因となります。

    その宣伝が上手だと社会的、対外的なイメージはもちろんアップします。しかし、CSRの取り組みというものは単なるイメージアップの先に成果を望むものであってはなりません。

    CSRというものは、企業の存在そのものとリンクしている根源的なものですから、一時的なイメージアップのためにCSRを利用するというような形態は長い目で見るとその企業にとって悪影響を及ぼす結果になりかねません。

    それは、その実態と違うイメージを守るために社会に対して嘘をつかなければならない局面が容易に想定されうるからです。以前のコラムでも書いた通り、CSRというものは善意性が高いが故に、その裏切りは企業ブランドに大きな傷を付けることになります。

    それらを避けるために、経営者とCSR担当者だけが一生懸命に取り組むCSRではなく、全社的に取り組むCSRの展開と、それらをきちんと広報していくという流れを作ることが重要であるということになります。

    そこで、ある同じ業界の二つの企業の事例から、社員を巻き込むCSRの取り組みについて考えてみましょう。

    ■企業の底力につなげるCSR活用■

    ある国内線の飛行機に乗り、サービスとしての飲み物の提供にコーヒーを頼んだとします。そこで「ミルクと砂糖はご入り用ですか?」と聞かれ、「砂糖をください」と答えた時の対応です。

    一社のほうは、コーヒーフレッシュと砂糖、マドラーが入ったビニール袋をもらえます。もう一社は、砂糖とマドラーをそれぞれ単品で渡してもらえます。

    この違いがおわかりになるでしょうか? 一言で言えば、不要なコーヒーフレッシュやビニール袋も手渡すサービスとニーズに合わせた単品だけを渡すサービスの違いです。

    このわずかな違いが、洞爺湖サミットも開催され厳しいCO2の削減目標達成のために各企業が知恵を絞る中、空を飛ぶ飛行機に搭載する備品の削減ということで意味あるものになっているということでした。とはいえ、たかだかコーヒーの消耗品、ボーイングの747であれば機体だけで170トンもあるのですから、その中で何キロという単位で削減したところでたかが知れているじゃないか、というご意見はもっともです。

    ところが、この取り組みはCO2削減とは違う観点で大きな意味を持っています。
    それは、この削減案は現場のキャビンアテンダントが提案し、全社的に展開したものなのです。

    つまり、CSRの取り組みとしてのCO2削減案を現場レベルからの発案として拾える体制を作り、全社的に展開できるという状態が作られていることが最も重要な点なのです。

    このような全社を巻き込むムーブメントを仕掛けられるか、またはそれを広げられる社風を持てるかどうか、これは経営者と担当部門だけがCSRを展開しようとしてうまくいかない状態を回避するためにとても重要なポイントです。

    そしてこれを含めた全社的な取り組みの成果として、この企業は大きな経費削減の成果を上げています。

    経費削減効果だけでなく、このような社風を持てる企業は現場に元気があるということですので、将来伸びていく大きな芽を持っている底力のある企業と言えるのです。

    もちろん、これによって生まれた自社のCSRの取り組みは社員の理解するところとなりますから、ES(従業員満足・社員の働く幸福感)も高まるという効果が期待できます。

    ☆ここがポイント☆

    1.CSRの取り組みは全社的なムーブメントにすることで社会に理解される流れができる
    2.CSRの取り組みをボトムアップで展開することで全社的な巻き込み感を醸成する
    3.現場を元気にするためにCSRの取り組みを利用することは非常に有効

  • 2008.09.24

    市民が選ぶCSR大賞(第二回)

    スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。

    その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。

    ————————————————————

    ■今年もやります!「市民が選ぶCSR大賞

    会社がCSRの取り組みを続けていく上で最もうれしいことはなんでしょうか?
    それはやはり「お客様や社会から応援してもらえること」ではないでしょうか。

    応援の方法として最良なのは、その会社の商品を選んで買うことや株を買って長期保有することです。
    しかしながら、商品の購入は比較的容易でも株の購入となると大変です。

    そこで、もっとベーシックに「声援を贈る」ことができないものか、市民の声をCSRに取り組む会社に社会からのメッセージとして届けることができないかと考えたのが、私が企画・運営の責任者をしている「CANPAN CSR プラス」というサイトで実施する、「CANPAN CSR プラス大賞」です。

    ■CANPAN CSR プラス■
    http://canpan.info/csr/

    この大賞は、日本で唯一の「市民が選ぶCSR大賞」です。専門家が選ぶCSR大賞はすでに色々とありますが、市民が直接、その会社のCSRの取り組みに対して投票することができる賞は今のところ他にはありません。

    たしかにCSRは様々な取り組み方法と形があり、専門性が高い部分があるのも事実です。したがって専門家による視点でそれらの取り組みを褒めることは大切なことです。

    しかしそれだけでは、せっかく一生懸命取り組んでいる内容が市民に理解され広まるスキームが不足したままであり、結果的に取り組み自体が市民に理解されない状況が続いてしまいます。また、市民のCSRに対する理解度はどうなのか、というバロメーターそのものもはっきりしませんでした。

    そこで、できるだけダイレクトに市民の声を企業に届かせることができるフレームとして「市民が選ぶ賞」は意味があるだろうと考えました。

    そして昨年第一回を開催し、難しいと言われた1万人の目標投票者数が結果的に2万人を超える方からご投票をいただきました。これは、社会の関心の高さを証明すると共に、市民側も会社が取り組むCSRを応援するマインドを持っていることを証明したものでした。

    ■詳細はこちらをご覧ください■
    http://blog.canpan.info/csr2007/category_5/

    今年は洞爺湖サミットも行われ、環境に対する社会の関心も過去にないほどに高まっています。それは8月の異常気象など、肌で感じることのできる変化も加わり、加速感を増しています。

    しかし、CSRは環境への取り組みが全てではありません。むしろそれ以外にも大切な取り組みが多々あります。それを市民に知ってもらい、投票という形で応援してもらうために、今年は昨年にも増して多くの方にご協力をいただいて開催いたします。

    今年のテーマの一つは、「地域(または地方)」と「中小」です。このコラムの中でもこのテーマを比較的多く取り上げてまいりましたが、その理由はこの二つのキーワードが「日本を元気にするキー」であると思うからです。

    ■地元に根差す中小企業のCSR

    今年の「CANPAN CSR プラス大賞」のノミネートはすでに終わっていますが、今年も昨年同様、二種類のノミネート方法を採用いたしました。

    一つは、CANPAN CSR プラスサイト上にある各会社のCSRの取り組みの情報開示度が高い会社10社です。
    これは自主登録によってCANPAN CSR プラスが提供している48項目について、どれだけ情報を開示しているかを数値化したもので、その数値が高い会社をエントリー要件として22社がエントリーされ、その中から10社がノミネート企業となりました。(結果的に東証一部上場企業10社が残りました。)

    もう一つは、全国各地10ヶ所のNP0支援センターという組織が「地方でCSRをがんばっている企業」として一社ずつ推薦する地方推薦枠です。

    こちらのノミネートは単なる情報開示度だけではなく、取り組みのユニークさや地域に溶け込んでCSRの取り組みを行っているかどうかなどが評価対象となり、推薦されています。(この独特の取り組みがとても優れているのです。)

    青森では、より市民からの声を反映させるため、「青森選抜」として推薦企業を決めるWeb投票を行っていらっしゃいました。

    ■あおもりNPOサポートセンター■
    http://www.a-nponet.jp/

    このように、東証一部上場企業は活動規模の大きさ故に要求される社会的責任も大きいため積極的な情報開示の結果として、中小企業の場合は、地域からのバックアップを受けてエントリーされるという形で、全20社がノミネートされました。

    ■今年のノミネート企業一覧■
    http://blog.canpan.info/csraward_2008/category_4/

    昨年投票された方々へのアンケート結果では、7割の方が「CSR」という言葉を知りませんでした。それでも投票されたのは、「CSRという流行り言葉ではなく、本質としての企業行動を評価した」結果です。

    つまり、市民は会社のCSRの取り組みをきちんと見ていることがわかったのであり、市民が企業のCSRの「取り組み」を応援するということにも真実味と重みが出ました。

    そこで今年の投票は、企業名が出る前に当該企業の取り組みがまず表示され、その内容を見ていただいた後、応援したい活動(企業)に対して投票するような画面の遷移となっています。

    今年のノミネート企業はどこもすばらしいCSRの取り組みをされているので、それを一覧することができるようにしたかったのです。
    この中から市民の皆さんが投票するのはどのような活動なのでしょうか?

    私は、ぜひ地元に根付いて昔から続けられてこられたCSRの取り組みが評価されることを願っています。それは、昨年のノミネート企業様がおっしゃられていたとおり、その会社にとって大きな励みとなり、さらに地域を巻き込んだ素晴らしい取り組みになっていくきっかけとなるからです。

    地域を巻き込んだCSRの取り組みが市民から応援されることで、地域が元気になる。そんなきっかけをこの大賞が果たせればと考えています。

    ぜひ、皆さまもご一票いただき、各社の取り組みを理解する機会とするだけでなく、一生懸命CSRに取り組む会社の応援にご協力ください。

    また、お時間が許す方は2008年11月7日(金)に行われる表彰式にもご参加ください!

    ■ここがポイント■
    1.市民(社会)の応援なくして、企業のCSRの継続的取り組みはあり得ない
    2.市民は「CSR」という言葉ではなく、企業の行動としての取り組みそのものをきちんと評価しようとしている
    3.専門家目線ではない「市民が選ぶCSR大賞」は、企業のCSRの取り組みを社会が応援するという点で大きな意味を持つ

    ■こちらもぜひご覧ください—————————————
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    http://s-pr.com/mmag/index.php