• 2009.04.13

    就活戦線異状あり(1)

    ■不況の中の就職活動■

    今年の就職活動はまさに氷河期になりました。
    各企業が必死で内定学生の囲い込みをしていた昨年から考えるとまったく信じられないほどの社会情勢の急激な変化です。

    わずか一年で学生にとっては天と地ほどの差が出てしまったという意見もありますが、実態はそれほど甘いものではないようです。

    企業によっては新人の今年4月からの出勤を差し止め、自宅待機を命じているケースもあります。これでは就職できたことを喜ぶどころか、むしろなまじ就職してしまったが故の不安の中で新社会人の道を歩みださなければなりません。
    それを思うと、巨大な不況の波の前では一年の差はあまり意味がないようです。

    そして、そのもう一方の雇う側である企業もたいへんな苦しみの中にいます。
    大手企業の軒並みのベースアップゼロ回答。そしてそれを受け入れざるを得ないであろう労働組合。日本全体が深い海の底に沈み続けているようです。

    そんな中、「会社の10年後を背負う社員を獲得できるのは今しかない」とこの不況を前向きにとらえている会社もあります。実はこの会社の考え方は全く正しいのです。

    今から約20年前、造船業界は韓国などの造船技術の高度化と低価格化による国際競争力のアップなどを一つの大きな原因として、大不況に見舞われていました。

    大不況の業界を希望する学生も少なく、また企業もリストラはしても新入社員を雇うこともせず、業界全体がこのまま沈んでいくかに思われました。
    しかしこの世界不況前までの数年、造船業界は好景気に転じていました。

    約15~20年という月日は、新卒で就職した学生が40歳前後のまさに働き盛りになるまでの月日です。その業界が復活した時、今度は現場でバリバリと働く社員層、特に技術工がすっぽりと抜けてしまっていたのです。

    ■企業の社会性を意識する学生たち■

    これは、業界全体にとって大きな痛手となりました。注文が入ってもそれをこなすことのできる現場監督が足りなくなってしまったからです。

    結果としては、将来的な国際競争力低下の危機の一因となりつつも、何年も先の注文を抱えるほどの好景気となったのでしたが、この将来を見越して就職した学生がいたとすれば、彼は今ごろ他の企業ではあり得ないような重要な役職を若くして任される立場になっていたことでしょう。

    実際に、そのような人もいたかもしれません。しかし、多くの学生はバブル絶頂期という追い風の中、不況の嵐の吹き荒れる業界などには全く見向きもせず、漠然とした価値基準で就職しました。

    結果として、なんとなく自分のやりたかった仕事はこれではないという不満を抱えて働いていくという、現在社会問題としてもとりあげられるようなタイプの社会人が増えてしまったのです。

    しかし、そんな当時の学生とは反対に、最近は企業の社会的な視点を評価している学生が増えています。CSRという言葉を意識している学生はまだまだ少ないものの、企業が取り組む社会的なことに対して高い評価をし、企業を選ぶ基準としているのです。

    これは、社会情勢の裏返しなのかもしれませんが、社会にとってはとても有益なことで、この意識が働く動機として大きな塊になった学生は、就職するよりも最近何かと話題になる「社会起業家」への道を進んでいます。

    このCSR的な視点を企業選択の材料とする学生へのCSR的な広報アプローチは、会社の将来を担うような質の高い社員を雇用するために非常に有効です。

    ☆ここがポイント☆

    1.現在は会社の10年後を背負う社員を獲得できるチャンス
    2.CSRを会社選びの基準にしている学生は増加している
    3.CSRへの関心の高い学生への広報的アプローチを考える