2018.07.06
■茨城の県都・水戸、なぜ「独り負け」が続くのか■
https://toyokeizai.net/articles/-/184696
実家のある水戸の地価、独り負けという記事。
茨城県では最大人口の27万人を擁する水戸市、産業構造的にはかなり偏ったサービス業中心の地方都市、人口は数年前まで微増していたが今は下落傾向。これは今後も続くだろう。
記事では地価価格の下落を課題とするが、本質ではない。税収は今のところ安定しているし、固定資産税も目立った減少は今のところ見られない。
つまり、地価価格の下落はそれほど市民の生活を左右しない。
それよりも、将来的に深刻となるであろう課題は、水戸市がかなり偏ったサービス業を中心とした都市であるにも関わらず、その担い手となるべき生産人口の減少率が高いことだ。
これから、工業はもとより農業を含めた製造関係はおしなべてAIと機械にその業務が代替されていくが、サービス業の多くは最後まで人間を求める領域が残り続ける領域だ。つまり、需要はシンギュラリティ(技術的特異点)後もある程度の期間、仕事がある。それだけに、生産人口が減ることは大きなリスクとなりうる。
一方、記事中でライバルとされるつくば市は生産人口が増加傾向にある。これは2040年くらいまで続くことが予測されている。
仮に水戸市に新幹線が来ていたとしよう。それが生産人口を増やす要因となっていたか、という点については否定的だ。なぜなら新幹線通勤には水戸は近すぎて、つくば市との差別化が困難だからだ。都心へのアクセスは圧倒的に本数も多い「つくばエキスプレス」のほうが利便性が高い。さらに、計画都市として道路も歩道も広く居心地の良いつくば市に比べ、元々城下町でごちゃごちゃしている水戸市では比較にならない。
さらに、水戸市が社会全体がイケイケで都市計画などなんとでもなる、と思っていた1980年代、つくば市は1985年の「つくば万博」を起点として、研究学園都市としての発展を計画、思った以上に遅れた「つくばエキスプレス」の開通を40年近く待った。その間に近くには空港もできた。おかげで今は研究学園都市として日本でも特化した素晴らしいコンテンツ都市となっている。今さら勝てるわけがない。
それらを考えていくと、この5-10年だけで言うなら、水戸が取り組むべき施策の一つは、安倍内閣が「働き方改革」といううわべだけの施策を打ち出しまくってる中、テレワークだ、サテライトオフィスだと、金をばらまいているので、この波に乗って企業誘致をすることだろう。
もちろん、そのための施策を考えることは必要だ。企業誘致に取り組む自治体は全国にあり、市場はレッドオーシャン化している。
そこでの競争優位性を出すには、ハードというよりソフト部分での戦略的誘致施策を考えていく必要がある。
少なくとも、テレワークとサテライトオフィスに関しては、「通勤には少し遠い」「移動には少し不便だが、がんばれば日帰り可」などいくつかのキーワードがある。その点で水戸市は優位性がある。
地理的条件というものは、新幹線とか飛行機とか、その条件をブレイクスルーできるツールは世の中的にはあるが、絶対ではないし、それになんと言っても金がかかる。その費用対効果を考えるなら、やはりその場所にある、という動かせない事実に目を向けて自分たちの強みを考えていくべきだ。
それらを総合的に見れば、水戸市には可能性が多くある、と思う。
独り負けだって悪くない。だって、安い価格で企業誘致できるわけだから何もマイナスではない。
ただ、問題は市政をシニア世代が舵取りしているということ。その間はその可能性すら活かすことは無理だろう。
その方々が自分の保身と健康以外のことを考えない市政を続ける間に、可能性はどんどん減って行くわけで、「緩慢なる衰退」を望まないなら、水戸市民も新しい世代に市政を任せていくべき時がとっくに来ていると思う。
2018.05.09
5月18日(金)に行われる下記URLのトークセッションに登壇させていただくことになりました。
https://www.facebook.com/events/1993225154325181/
素晴らしい二名のゲストスピーカーとお話しできることは大変光栄です。
内容としては、特に大企業でCSRや社会貢献部門にいらっしゃる方はもとより、新規事業やイノベーティブな事業創出を担当している方にオススメな内容になるのでは、と思っています。
参加費は無料になります。会場でお会いできますことを楽しみにしております。
■お二人のご紹介■
直近まで国連開発計画アジア・太平洋地域事務所に勤務され、現在はビジネスと人権、SDGs等のフィールドで国際的に活躍する弁護士の佐藤暁子さん
アスクルのトップ代理店の山崎文栄堂代表取締役社長であり、COHSA SHIBUYAプロジェクトの共同代表である山崎登さん
2018.01.26
東京都の中小企業診断士の皆様が作られているソーシャルビジネス研究会にて講演をさせていただきました。
テーマは「社会課題とビジネス」。これまでの講師の方々がどちらかというと「社会のために」という側面が強かったとお伺いしていたので、今回はソーシャルビジネスを進める上で必要な社会の変化への対応という点と、「収益」の在り方に関する内容を強めた内容でお話しさせていただきました。
・今日の話を聞いて中小企業診断士こそテクノロジーによる変化を含めた社会のこれからの動きを俯瞰的に知っていなければならないのではないか
・ソーシャルビジネスと本業のビジネスとの整理をどうすべきか?
このような研究会に参加される方々なだけにご質問は鋭く、思いが伝わってきました。
私は今の時代、またはこれからの時代、中小企業こそがバリューを発揮しやすい社会と考えています。
中小企業診断士という肩書きを持つ皆さまとこのような場を持てたことは貴重な機会となりました。
2018.01.23
ソーシャルビジネスカレッジ 「経営実践研究会CSV編」にて講師として「社会課題とビジネス」をテーマに講義をさせていただきました。
参加者は主に中小企業の経営者の皆さんです。それぞれの事業を通じて社会課題の解決や社会的価値創造を実践されようとしています。
私からは地球環境から世界のメガトレンド、そして具体的な個別の取り組みまでを幅広くお話しさせていただきました。
もし自分の事業がドメスティックだとしても、なぜメガトレンドを知っておく必要があるのか、世界はこれからどうシフトするか、国内の課題はどうなるか、さらに、それを踏まえてビジネスを行う場合に、どのようにPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を創り出すか、という話までを一時間半という短い時間で説明させていただきました。
かなりてんこ盛りな内容でしたので受講生の皆さんはお疲れになったと思いますが、好評だったようで安心いたしました。
社会課題解決型ビジネスの要諦の一つは、「したたかな戦略」です。いくら社会に良いビジネスでも、いや、だからこそ、赤字ではいけません。持続可能性が無いからです。
そして、企業の社会貢献も同様です。企業の社会貢献とは慈善事業だけを指すものではありません。
それを踏まえて、皆さんには「志とソロバンの両立」を徹底的に詰めていただきたいと思います。
■経営実践研究会■
2017.12.19
経済産業省による「ボランティアを活用した共助社会の構築に向けた研究会」の第三回に委員として参加しました。
東京オリパラに向けて企業ボランティア(社員ボランティア)への期待が高まる中、総論は賛成でも現場では必ずしも機運は盛り上がっていません。
その理由を考察し、必要なことなどを議論しつつ、企業が社員ボランティアを積極的に派遣できる仕組みづくりへとつなげることなどを議論しています。
「社会に良いこと」は、誰も反対しません。しかし、いざ自社でそれをコストをかけてでもやるか?という実践面では消極的にならざるを得ない。そこにはそれ相応の理由があります。
そこをきれいごとではなく、企業が持つ組織ロジックや環境を踏まえて、現実的な落としどころを探る、そこにこの研究会の要諦があると思っています。
第一回目の議事録はこちらからご覧いただけます。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mono_info_service.html#volunteer
2014.08.20
ここ数年、世界のクラウドファンディング市場はITの進化と歩調を合わせるように目覚ましい進化を遂げ、今では5000億市場に成長しているという試算もあります。
インターネットではロングテールを対象としたビジネスモデルが成立する強みがありますが、不特定多数から少額を集めるということを目的としたクラウドファンディングはその強みを活かし急激な成長を遂げています。
特に欧米おけるクラウドファンディング市場は資金流通の仕組みの一つとして認知され、大きく分けて購入型、寄付型、融資型、投資型の4つからなり、金額の規模も大小含め様々なサービスや活用がされ、目的や手法がユニークなものはニュースとして世界中で話題となることもあります。
一方の日本では、現状としては盛り上がりを欠いていると言わざるを得ません。その市場規模は成長してはいるものの世界と比して100分の1以下であり、GDP世界第三位の経済大国であることを考えると残念な状態が続いています。
そのような中、今年は日本でも大きな動きがありました。2014年5月23日に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が可決されたのです。実際の施行は来年からとなるようですが、これが施行されると日本でも実質的に株式型クラウドファンディングが可能となり、未上場企業が1億円を上限にインターネットを活用した公募増資ができるようになります。
どちらかというと善意による資金流通のプラットフォーム的な色合いが強かった日本のクラウドファンディング市場は、この法整備により資本主義的な市場原理が働き別次元へ移行していくでしょう。
市場規模の拡大の中で、従来までの「善意による資金流通」という色合いのある市場も拡大、社会課題解決を目的としたビジネスへの投資などが加速していくという肯定的未来図を想定すれば、社会課題解決の担い手としての企業という位置づけがより明確となり、様々な課題解決に向けた取り組みがよりチャレンジングにできる状態が創出されることになります。
また、これまで社会課題解決の担い手として活躍してきたNPOも投資対象として存在し得る状態となることで、日本のNPOが成長していく上でも大きな転機を迎えることになります。
日本の場合、NPOが投資対象として投資家から見てもらえるような存在感を出せるのか、という点については大きな課題があると言えます。最近は事業型のNPOも増えてきてはいるものの、まだまだ投資対象と見てもらえる団体はごく少数です。
クラウドファンディングがこれからますます活性化する中で、NPOと企業は「社会課題の解決」という事業において健全な競走を繰り広げてほしいと思います。社会課題の解決方法を競い、最適解は何かを互いに模索し、それに対して投資がされていくことは社会全体に多くの刺激を与え、イノベーションを生む土壌となるでしょう。
そして、その良質な資金循環市場の中での競走によりNPOも磨かれ、企業は新しいマーケットや新規事業創出の手がかりと経験を積んでいくことができるでしょう。
クラウドファンディングの未来は光と影が伴うものとなります。悪意をもってこの仕組みを使う人も確実に増えるでしょう。
しかし、社会課題の解決という側面で見た場合、クラウドファンディングは間違いなく社会にとってプラスとなる資金流通の仕組みの一つです。その優れた仕組みをどう活用するのか、それを法制度を含めてどのようにサポートしていくのか、今はそれが問われている黎明期にあると言えます。
2013.05.20
近年、ソーシャルビジネスという言葉を聞く機会が増えてきた。
ソーシャルビジネスとは、主に本業を通じて社会的課題をビジネスの中で解決していこうとするビジネスのことで、事業性を確保しているという点で、いわゆる企業の純粋な社会貢献活動とは異なる。
事業性を確保すると言っても、通常の営利ビジネスとは少し違った側面はもちろんある。最大の違いは、利益を得ることが第一の目的ではなく、社会課題の解決が目的であるという点である。
もちろん企業である以上、利益を考えなければ持続性が担保できない。ソーシャルビジネスとは、この二つを両立させるビジネスとも言え、単純に利益を上げるよりも難易度は高くなる。
そんなソーシャルビジネスを展開する上で重要なことは、様々なステークホルダーとWIN-WINの関係を構築しなければビジネスモデルがそもそも作れないということ。
近年の社会課題は複雑で、一社でリスクを取ってさらに利益を上げられるほど簡単ではない。したがって、公的な支援も含めた様々なノウハウを持ったステークホルダーと協働しなければならないことになる。これら、独特のビジネススキームをきちんと設計できるかがソーシャルビジネス成功の鍵となっていく。
このソーシャルビジネスの取り組みを行っている会社の中でも、世界的にもその存在が知られている「株式会社 雪国まいたけ(以下、雪国まいたけ)」の事例を考えてみたい。
雪国まいたけは、資本金約16億円で新潟県魚沼市に本社を持つ、「まいたけ」や「えりんぎ」、「もやし」などの生産販売などを行っている会社である。2011年より世界の最貧国の一つと言われるバングラデシュで「Mungbean Project(緑豆プロジェクト)」というソーシャルビジネスのプロジェクトを展開している。
このプロジェクトの推進母体は、雪国まいたけとノーベル賞受賞者であるムハマド・ユヌス博士率いるグラミングループのグラミン・クリシ財団、九州大学との三者により設立された合弁会社「グラミン雪国まいたけ(Grameen Yukiguni Maitake Ltd. 以下、GYM)」。
GYMの特徴は、ユヌス・ソーシャルビジネスのポリシーに基づき、利益配分は行わず、その利益は次の社会的な事業に回していくというやり方をとっていることである。
そのようなGYMが手がける緑豆プロジェクトは、バングラデシュと日本の双方、そしてこのビジネスに関わっているすべての方々にとってWIN-WINのビジネスモデルとなっている。
まず、バングラデシュにとって一番のメリットは雇用創出。本プロジェクトでは、豆の製造者である契約農家、できた豆を選別する作業者、そしてエンドユーザに売る販売者という三者に対し雇用の機会を提供している。
日本にとっては、安定的供給、価格上昇、安心安全という3つのリスクを回避できるという点が重要である。緑豆は発芽すると「もやし」になるが、この緑豆の約90%は中国からの輸入に頼っている。しかし価格は4年前と比べて2倍以上も上がっており、この価格はさらに上昇していくと予測されている。
このまま中国からの輸入に頼っていると、私たちにとって安価で栄養豊富な野菜の代表格であるもやしは高価な野菜になってしまうかもしれない。仕入れ先の多様化は日本にとって重要な問題である。
そして、近年中国などで特に問題になっている農薬など、食べている野菜は安全なのか、という点においても、雪国まいたけが行っている「雪国まいたけ安全システム」が活用できることから安心できるシステムが構築されている点も重要である。
本プロジェクトの責任者で雪国まいたけの上席執行役員である佐竹右行氏は、「さらに日本の優れた農業技術をバングラデシュの農民に伝え、量と質の向上も図っています。農村地域で付加価値が高く高価格の作物を農民が栽培することで現金収入も増えます。現在、約7,500人の契約農民が雇用され、約1,500トンの収穫があり、そのうちの約300トンが日本への輸出向けです。」と語られている。
単に貧困国であるバングラデシュを先進国である日本がサポートするのではなく、日本にもその成果物を輸出してもらうことで、お互いの課題を双方が持っているリソースのトレードによって解決するというWIN-WINの関係を作り、ビジネスとして成立させている点は素晴らしい。
このようなソーシャルビジネスの価値は今後、さらに社会的に注目され評価されていくだろう。
そして、それは会社の社会的価値を上げると共に、その組織の持続可能性も上げていくものである。
そういう意味においては、単なる企業の社会貢献とは一線を画している。
この雪国まいたけの取り組みは、これからの日本企業が目指すべきビジネスモデルの先駆けとして学ぶべき点が多々ある事業である。
2013.04.14
※本記事はオルタナ2013年3月号に寄稿したものです。
アベノミクスが始動し、期待感で株価が上昇しています。
私にはこの理由はよくわかりませんが、それだけ社会全体が閉塞感で押し潰れそうになっていることの裏返しなのだと思います。
また、「世界一を目指す」、「強い日本」、「イノベーションを世界へ」など、安部政権から発せられる言葉は強烈な印象を受けるものが多い一方、今のところは空虚感の漂う言葉であることも事実です。
これは今後の政府の具体的舵取りによって払拭してもらいたいと思っていますが、その間にも社会は益々混迷をきわめ、経済は弱体化、大企業は硬直化した従来型経営を変えることができず、社会的弱者は増加、セーフティーネットも縮小の一途を辿っています。
これらは日本特有のものではなく、これまで世界を牽引してきた先進国全体が直面している課題でもあります。
そんな中、社会課題解決の担い手としての企業への期待感が強まるのは当然と言えます。ビジネスが顧客のニーズを満たすことによって対価を得るものである以上、社会課題が社会のニーズ化している今、それらをビジネスで解決するのはごく自然なことです。
では、なぜそれらの取り組みが「イノベーション」という言葉で語られているのでしょうか。
それは、現状の複雑かつ多様な社会課題の解決をビジネスという切り口で取り組もうとした場合、従来までのビジネスモデルの考え方では収益を生み出すことができない、あるいはそもそもビジネスモデルとして成り立たないために、それらを飛び越えた発想の先にビジネスモデルが存在しているからと言えます。
有名な逸話として、それまでパソコン一筋だったアップル社が「iPod」という音楽プレーヤーを突然創り出した話があります。自宅にある全ての音楽CDを持ち運べるというイノベーティブな製品は、ジョブズ氏が困っていた友人のために作ったことがきっかけとなりました。
一つのイノベーティブなアイディアは、積み上げ型の発想からは生まれません。パソコンを売る企業という枠組みで、アップル社が次の製品をどれほど考え続けたとしてもiPodは生まれないのです。
当時ソニーがiPodを造るための技術もコンセプトも持っていたのにそれを作り出せなかった指摘はこの点でも納得のいくものと言わざるをえません。
もし自社でエクスクルーシブバリュー(唯一価値)のある新規事業を創りたいというのであれば、社会課題からのバックキャスティングによって発想を飛躍させることを提案します。
それはおそらく、今までの自社の事業領域とは全く違うものである可能性が高いでしょう。しかし、その事業が成功した場合、iPod以降アップル社が単なるパソコンメーカーではなくなったように、将来、それは全く違和感なく、その会社を代表する事業として語られていくに違いありません。
世界における日本企業のプレゼンスを考える時、日本の技術力を活かした領域はもちろんのこと、社会課題解決型ビジネスという視点を常に持つことで、世界に必要とされる日本企業の復活は難しくないと考えています。
唯一の課題は、このような新規事業づくりの発想そのものが今の日本の、特に大企業の文化の中から失われてしまっているという事実であり、それが本当の社会的ボトルネックなのかもしれません。
2012.11.21
「ソーシャル・イノベーション(社会変革)」という言葉が、NPO業界や特に先進的な企業の中で聞かれるようになって数年、その間も国際社会での日本の存在感は低下し続けてきた。中国や韓国との軋轢も日本経済にじわりと影響を与えている。
その中で苦しみ続けるメーカーを中心とした日本企業は、従来までの事業への閉塞感を感じつつもドラスティックな舵の変換をできずにいる。
ソーシャル・イノベーションという言葉は、このような日本社会全体の閉塞感の打破を含めた突破口の一つとして多くを期待されているようだ。
社会起業家と呼ばれるような人たちが注目されているのもそのあらわれと言えるだろう。彼らが行っていることはたしかにソーシャル・イノベーションであり、国や行政だけでなく企業も注目するに値する取り組みが多い。
現在までの日本の数十年を振り返れば、私たちは世界の中で天国のような社会を実現させてきたと言える。
もちろんその間にも日本社会に多くの課題があったのは事実だが、「社会課題」という言葉が指すものは、多くの場合、社会的弱者を指すものであり、自分たちが社会課題の対象であるという意識を持って生活していた日本人は少なかったはずだ。
しかし、今、日本社会における「社会課題」は、少子化や高齢化に代表されるように、日本人全体が巻き込まれ、いわゆるマジョリティがその対象となってしまった。
企業が取り組もうとするソーシャル・イノベーションは、まさにこの点において多くの可能性を秘めている。社会的弱者がマイノリティの枠にとどまっている限りにおいて、それをビジネスで解決していくというのは難易度が高く事業の持続性という点で多くの課題を抱えてしまう。
しかし、これがマジョリティになると一気にビジネスチャンスの沃野が広がってくる。
今、「社会課題の解決をビジネスで行っていく」という言葉にリアリティがあるのは、その対象者が多いことから、ビジネスとして成り立つ、あるいはスケールメリットを打ち出すことができる可能性があるからだ。
本来、社会課題は社会のニーズであり、社会のニーズには必ずビジネスチャンスがある。
それは昔から変わらぬ真理であり、実際、日本が戦後の焼け野原から著しい経済発展を遂げた母体となったのも、まさにこの考え方に基づいていた経営があったからであることは今さら指摘するまでもない。
日本企業は自らのビジネスを社会課題の解決によって成長させてきたという歴史を持っている。
しかし、今の日本企業にはその考え方そのものが失われていると言わざるを得ない部分が多々見受けられる。
社会が一定の成熟を果たした今、たとえば白物家電に代表される電化製品の領域では、日本市場の中で突出したニーズを創出するようなことは限りなく困難だ。付加価値化というようなオブラートでは、大企業の経営を支えるような爆発的売上は生み出せない。
このような成長社会から持続可能社会への転換期という物が売れない時代に日本企業はどう生き残れるのか、あるいはどうあるべきか、を考えると「ソーシャル・イノベーション(社会変革)」という領域での新規事業への取り組みに行きつくことは間違っていない。
今、社会の中でそのような動きが始まっていることはもっと多くの企業が注目すべきことである。
それらの萌芽は今は小さいが、それらが持つ社会のニーズの大きさは、少なくとも日本企業に多くの学びと将来の可能性を感じさせるものであるからだ。
2010.10.01
最近、あちこちで「イノベーションを起こさなければならない」とか、「イノベーションが世界の課題解決のために必要だ」という意見をよく聞く。
全くその通りだと思う。
今、世界の課題と言われるものは、人類がかつて経験したことのない大変に困難なものばかりだ。
もちろん、昔の課題が楽だったわけじゃない。
ペスト(天然痘)が流行した中世のヨーロッパは、文明存亡の危機にすら見舞われた。
(病原菌に対しては、必ず抗体を持っている人たちが存在するそうで、人類そのものがそれで死滅するということはないようだ。)
それを思えば、今の課題はそこまで深刻ではないとすら言える気もする。
だが、真綿を締めるように襲いくる気候変動はどうだろう?
人類そのものが地球に住めなくなるとしたら、その危機はペストどころの話ではない。
ウォーターフットプリントを考えれば、このままだと人類は数十億人の単位で飢えて死ぬことになりそうだし、世界中で高齢化が進むと経済だって破綻してしまう。
つまり、人類がDNAや文明の存亡を賭けた危機的状況にあり、それを打開していく術を見つけ出していかなければならないのは自明すぎるくらい自明だ。
とすると、次にすべきは、その「「イノベーション」というものをどうやって起こすのか?」
ということになる。
これは言い切っていいと思うが、イノベーションなんてそんな簡単に起こせるものじゃない。
課題にもレベルがあるので、一概には言えないが、それを生み出すために必要なエネルギーは途方もないことのほうが多い。
でも、やらなきゃいけない。
ということで、社会課題の解決に向けたイノベーションを起こす一つの手法の案として、最近、気づいたのは、
異業種や異質な人たちをソーシャル領域に巻き込む
ということ。
そんなの当たり前だし、もうやってるよ、という人も多いと思う。
たしかに最近は、社会課題の解決のために汗するNPO業界においても、プロボノをはじめとする様々な変革の動きがあるのはたしかで、素晴らしいことなのだが、私が言いたいのは、
「社会課題になど全く興味の無い人をポジティブに巻き込む」
ということ。
ある社会課題のテーマに関心のある人たち、プロボノの方々も含め、が集まってワークショップが頻繁に行われている。
そこで感じるのは、参加者がいくら別々の多様な背景を持った人たちであったとしても、やはり積極的にそれに参加している時点で、思考の指向性が似ているので、共感は呼べても革命的な発想が生まれにくいようなのだ。
革命的なアイディアやソリューションの発芽は、もっと異質な存在、かき回してくれるものの存在が必要なのだが、それが無いのである。
そうなると、打ち手としては、全く共感を呼ぶベースの無い人たちと、その課題について話すという困難なことをしないとダメそうだと思うようになった。
考えてもみてほしい。
これだけ、世界が大変なことになっているというのに、社会の関心は相変わらずAKB48だし、同じ中南米のコロンビアやグァテマラで何十人もが亡くなる災害が起こっているのに、TVは連日チリの落盤事故のヒューマンドラマばかりを放送している。
これが現実だし、そもそも人類とは、たぶんこういう性格なのだ。
だからといって、それを憂う時間もないし、その必要もない。
要は、そういう社会に対して関心領域を創り出せばいい。
それ自体もイノベーティブと言えるのかもしれないが、それは自分の中でまだ回答がない。
ただ、アイディア勝負で何かが起こせる気がする。
そこで、一つの社会実験として、こんな夢のような企画をやってみることにした。
【しあわせライフを目指す「肉食系女子」のための合コン企画がついに実現!】
http://blog.canpan.info/cosmo/archive/251
なんで「合コン」なんだ?
なんで「肉食系女子」なんだ?
それは長くなるのでおいおい書いていこうと思う。
いずれにしても、イノベーションを起こすということは、やりようによっては楽しく、しかもポジティブに、多くの無関心層にも関心領域を創り出しながら、一緒にできる、そんな気がしている。
それで社会を、世界を、前向きに変えられるとしたら、それは明るい未来へとつながっているのではないだろうか。
2009.11.15
今日は、自分の沖縄出張のメインとなる研修会・ギャザリングに参加。
これは、ソーシャル・デザイン・ファンド(SDF)さん主催で開催されるもので、関西学院大でNPO活動をされている学生たちによる「日本ポリグル」との協働事業や、「CASAプロジェクト」などのプレゼンがあった。
その後、「SIFE(サイフ)」Japanカントリーコーディネーターの中谷さんから「SIFE(Students In Free Enterprise)」についてのプレゼンがあった。
SIFEのミッションは、「ポジティブな経済の力を活用し、現在のビジネスリーダーと未来のビジネスリーターが一緒によりよい持続可能な世界をつくれるようにする」というもので、非常に共感できるミッションで活動されている。
その歴史は意外と古く、元々はウォールマート(Walmart)の今で言うCSRの一環として、今から30年前ほどから開始されているとのこと。
2004年以降、世界的に広がったSIFEの活動の集約としてワールドカップを開催している。
いわゆるビジネスプランコンテストでも、社会課題解決のためのモデルケースを生み出すようなコンテストは、CANPANインターンでも展開しているが、いくつか人気のあるものが存在している。
SIFEのコンテストがこれらのコンテストと異なる点の一番大きな点は、実践をしていることが一つの指標として必要であるということである。つまり頭で考えただけのプランではダメで、それを実践していることが必要となる。
これはとても大事なことだ。頭でわかっているのと、それを実行できるかは全くと言っていいほど別のものだからである。
今の日本は、幸いなことに知識が豊富な人が多い。また、一を知れば十を知る人もたくさんいる。
だが、一を知って一の行動ができる人は砂場のダイヤくらいに少ない。
「頭の良さ×行動力」ができる人は今の社会の中で本当に必要とされ、あちこちからお呼びがかかる。若い人たちには机の上の勉強よりもこちらのスキルをむしろ身に付けてほしいと思う。
まかり間違っても自分は行動していないのに行動している他人を批判するような人間にはなって欲しくない。(残念なことにこういう人も多い。)
それはともかく、情報過多の時代であるが故にリアルを知っている、体験している人間は逆に貴重なのである。
例えば、プロジェクト企画を実施するにあたり、社会的インパクトを狙いたいものほど関係する人の数は当然多くなる。
この全体の意見を調整したり、利害関係を調整したり、あるいは巻き込むべき人をうまく巻き込み、役割をしっかり分担できるかなど、頭の中で考える方程式だけでは全く役に立たないノウハウが必要になり、これを持っている人こそがアクションにおいて必要とされるのである。
CANPANのインターンの学生たちにもこれをぜひ学んでもらいたいところでもある。
ということで興味深く拝聴した後、マピオンさんと一緒にCANPANの説明を行った。
なぜマピオンさんと???ということだが、もうちょっと具体化したらお話しできると思いますのでお楽しみに!
2009.11.07
CANPANとしては、一年で最も熱い日の一つであるCANPANブログ大賞連動企画「ソーシャルブログフォーラム」が開催され、今回も心温まる場所が東京に出現しました
■CANPAN第四回ブログ大賞■
http://blog.canpan.info/blog_award2009/
日本財団会長の笹川は、CANPANオープン当初に「このフォーラムを東京ドームで開催したい」という希望を口にしています。
これは決して夢物語ではなく、おそらく実現することになるというリアリティを最近感じていて、また、こんな形でシンボリックに社会に対してソーシャル(市民活動)が前面に出てくることの重要性を感じてもいます。
ただ、企画立案者の自分としては、「どうやって実現しよう???」という思いもあり・・・
いきなり東京ドームの前に、武道館をまず埋める企画のほうがいいかな、とか・・・日和ったり・・・
武道館でも、今回のブログフォーラム参加者から計算するに、あと2万9千9百人くらい動員しないといけないので、ちょっと先が長そうだと・・・
そこで
フォーラムでこの人数を動員するのは途方に暮れる感じなので、「ソーシャルエンターテイメント(SE)」という言葉を創ってみた。
ジャニーズエンターテイメント(JE)の向こうを張っての「ソーシャルエンターテイメント(SE)」
イケメン男子がソーシャルについて熱く語るとか、「ソーシャルを地図に残す」というユニット、
略して「S-MAP(読み方はスマップじゃなくてエス-マップ)」
というグループがソーシャルな歌(どんな歌だ???)を歌うとか、そんな感じでソーシャルしたい若い層とソーシャル系男子(これは山田くんが作った言葉)に響く人たちに集まってもらうということで、そのうちやりたいと思います
間違っても、この場合のSEはシステムエンジニアではありませんので・・・