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ソーシャルマーケティングの現状と課題

多くの人たちに鮮烈な記憶を残したボルビックのCRM(コーズ・リレーテッド・マーケティング)として「1L for 10L(ワンリッター フォー テンリッター)」がありますね。
プロジェクトの詳細は下記のURLをご覧いただきたいですが、これは、ここ10年内におけるCRMの認知度としては、最も成功した事例と言えるでしょう。

■1L for 10L■
http://www.kirin.co.jp/products/softdrink/volvic/1lfor10l/

2009年の野村総合研究所の調査によれば、回答した消費者の60%が「同じ機能・値段ならば、社会貢献できる製品を買う」と回答しています。最新のデータでは2012年の消費者庁による意識調査で、53.2%が購入時に製品やサービスの環境負荷について意識し、35.6%が事業者の経営方針や理念・社会貢献活動を意識していると回答しています。

この二つの調査は、それぞれ聞く内容が異なっているため一概に比較することはできません。しかし、これらのデータ双方とも消費者の購買行動にこのような意識が少なからず働いているということを示しているといえます。

東日本大震災以降、このような消費者意識はソーシャルな方向へと大きくシフトしてきたと言われています。特に環境面においては、ここのところの異常気象などを消費者自らが自分事として体感していることもあり、これまで環境などに関心がなかった人たちも意識を向け始めているのは当然の流れかもしれません。

これら消費者を取り巻く環境の変化や意識の高まりに対する企業側の対応は、以前であれば「守りのCSR」と呼ばれる領域での対応が多いものでした。しかし現在は、これらを意識した消費者に対する積極的なアプローチ、すなわち、それらを特性とした製品やサービスを開発し、マーケティング戦略として展開していこうという「攻めのCSR」として取り組むケースが増えており、これらソーシャルマーケティングの事例は年々増えていると言えます。

一方で、課題はその規模感です。先のボルビックに見られるような社会的反響と経済面を含めた大きなスケールでの成功事例はほとんどありません。

野村総研の調査にもあるとおり、消費者が社会貢献の製品を買うには、「同じ機能・値段ならば」という前提があります。つまり社会貢献性は付加価値としての認知であり、まだ消費者の購買行動の幹に刺さっているわけではない。

これは決して、社会貢献性のある製品やサービスが他と比べて劣っていることを意味しません。むしろそれらの製品は本質的には他者よりすぐれている場合も多いのです。

では、なぜスケールアウトしないのでしょうか。それは、ソーシャルマーケティングに不可欠な「社会との共感共有」という重要な点において、それを創り出せるマーケッターがまだまだ少ないということが上げられると思います。

これは現状では残念なことですが、これらのマーケッターに絶望的に欠けているのは社会的な視点です。モノを売る、ということだけは上手いけれどその社会的価値の伝え方が全くできない。それはこれまでの業界そのものの考え方がそうだったので仕方がないと言えば仕方がない。

でも今後は、そのような手法ができるマーケッターは増えるでしょう、若い人たちの中にそもそもそのようなマインドを持った人たちがいて、これから社会で活躍していくからです。

いずれにしても、ソーシャルマーケティングは今後、ますます企業にとって必要なものとなっていくことは間違いなく、その点では時代のほうが先に進んでしまっている感がありますね。