「スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。
その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。
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■日本ではまだCSR=コストという壁を越えられない
今回は、ちょっと視点を変えたCSR広報を読者のみなさんと一緒に考えたいと思います。
前回の号で、ソニーが約4000社の調達取引先企業に対し、CSR監査を義務付けることを発表したことを書きました。取引先としてふさわしい企業かどうかをCSRという視点から判断される時代の到来、それはCSRに取り組んでいない会社は取引交渉の土俵にすら上げてもらえないということです。
「CSR=コスト」と考えている企業にとって、この現状は憂うべき状態です。
「またコスト要因が増えた、これじゃあどこから利益を上げたらいいのだ」という嘆く経営者の方が日本にはたくさんいらっしゃることでしょう。
日本の多くの企業にとって、CSRに対する認識はまだこの程度でしかなく、この状態が続けば、日本の未来は決して明るいとは言えません。
なぜならCSRがコストという状態では、世界に取り残されていくことが明白だからです。ご存じのとおり、環境問題や世界経済の行き詰まり感は危機的な状況にあります。それに対して様々な手を打っていく必要性が世界中で叫ばれ、実践されています。
欧米では、これらの問題に取り組む企業を評価し、応援していくための投資、すなわち社会的責任投資(SRI)の規模が350兆円にも上ります。それに対して日本のSRIの市場規模はなんとわずか0.3兆円です。
この現状が、日本企業をしてCSRがコストと言わしめる原因のわかりやすい比較です。つまりCSRに真面目に取り組んでいる企業を投資家が評価する仕組みが日本にはないのです。一方では、CSRに取り組んでいない企業とは取り引きしないよと言われてしまう。
■社会に対してCSRを理解してもらうための団結広報
まさに責任だけ負わされてまったく受益がない状態を強いられているわけで、この状態が長く続いては、「CSR=コスト」というイメージはますます企業の常識として定着してしまい、本来は企業を活性化させるためのツールであるはずのCSRは会社のお荷物化するでしょう。
国が進めるワークライフバランスにしても、大企業から減った残業時間はそのまま下請け企業にスライドしているだけ、という指摘も決して否定できる状況ではありません。これでは一体何のためのCSRなのかという状態です。
「美しいCSRの理想論はもういい、こんな現状でもなおCSRに取り組まなければならないのか」という嘆きは当然でもあります。この、地球が置かれている自然環境と同じような危機的状況をどうすればいいのでしょうか?
ここに私は「CSR広報」の重要性を見出します。個々の会社が、それぞれ自社のCSRをどう広報していくかに取り組むことはもちろん大切ですが、企業界全体のためにCSRとは何かを世の中に周知する、具体的には、自社のCSR を広報する際に「なぜ私たちはCSRというものに取り組んでいるのか」を一緒に説明してほしいのです。そうすることで、CSRに馴染みのなかった人々にCSRの大切さを訴えることができます。
結果としてそのような企業が増えれば増えるほど、CSRは日本社会に理解されて根付き、投資や市民の消費行動の中で、CSR活動をしている企業を支えようとする動きが欧米同様に出てくるでしょう。
投資信託のメニューにも先ほどのSRI投資のメニューがたさくん作られていくでしょう。
そうなれば、CSRに取り組む企業を支える社会的システムも一気に充実してきます。それをトリガーとして、次はイギリスのように年金法が改正されるなど、こうした企業への支援が大規模に変わる動きへとつながっていきます。
■ここがポイント■
1.日本社会のCSRの認知はまだまだ低い
2.自社のCSR広報と同時に社会にCSRそのものを理解させる広報を!
3.社会の「CSRへの理解」なくしてCSRに取り組む企業への理解は無い
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