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水中分娩から考える、産み方を選べる環境づくりの大切さ【sinKA社員コラム】

「水中分娩」という方法を、先日初めて知った。

水中分娩とは、人肌ほどの温かいお湯の中で赤ちゃんを産む方法だ。お湯に浸かることで母体がリラックスできるほか、浮力の作用で体勢も変えやすく、さまざまなメリットがあるという。不思議なことに、赤ちゃんは溺れないらしい。

ベッドに横になっての出産は、重力の向きと合っていないので、余計な力がかかるそうだ。言われてみれば、確かにそうかもしれない、と思った。

 

先日、日本とイギリス両国での看護師および助産師としての経験をもつ方のお話を伺う機会があった。イギリスでは、水中分娩や自宅出産など、出産方法を選べる環境が整っているという。妊娠がわかった時から出産後のケアまで、基本的に助産師がトータルでサポートするそうだ。そうして築かれた信頼関係のもとで、母親は心身ともに安心して子を産み、育てられる。母親の状態はもちろん子どもにも影響するので、とても良い仕組みだと感じた。

「日本の女性も、もっと声をあげていくべきだ」

そう力強く語るその方のまなざしが、強く印象に残っている。その言葉を聞きながら、出産方法を選択できる社会に向けて声を上げること以前に、そもそも選択肢があることを知らなかった自分、あるいは、「他の方法があるかもしれない」と想像すらしてこなかった自分を、少し恥ずかしく思った。

 

「出産」と聞けば、「鼻からスイカが出る」といった比喩や、テレビで見たような激しい陣痛に襲われるシーンが思い浮かぶ。

「“無痛分娩”って言うけど、完全に痛くないわけじゃないの。あれは“麻酔分娩”と言ったほうが正確なのよ」

一緒に話を聞いていた10代の女性たちも、無痛なのに痛いの?と興味と不安が入り混じった表情をしていた。

「痛みが気持ちよさになったりするんだよ」

へぇ、と驚きの声が上がる。赤ちゃんの動きと、母体の変化がシンクロすると、痛みがある種の快感へとつながることがあるという。なんとも神秘的な話だった。

 

イギリスでは、助産師と産科医の役割が明確に分かれていて、しかも対等なのだそうだ。助産師は、「通常の妊娠出産のトータルサポート」、産科医は「何か異常が発生した際のサポート」を担う。産科医が異常を治したら、すぐに助産師のもとに戻されるらしい。

一方、日本では、産科医のもとに助産師がいる形が主流で、基本的に医師には「処置によって命を救う」という役割が求められている。そのため、陣痛をコントロールしたり、麻酔を使ったりといった対応が一般的になっているという。

 

赤ちゃんの側が「今ならいける」と判断して始まるのが本来の陣痛だと聞くと、こちらでそれを人為的に操作することに、個人的には違和感を覚えた。
「何日の何時から陣痛を始めましょう」と予定を立てて出産を進めるという話も聞き、そんなに計画的に行わないといけないくらい余裕のない社会なのか、と思わず唖然としてしまった。

イギリスでは、2人目の出産は自宅で行う人が多いという。1人目の経験がある場合、病院と自宅でのリスクと安全性は大きく変わらず、それならば慣れ親しんだ空間である自宅のほうが母体がリラックスできる、という考え方からだそうだ。

 

大切なのは、「何が正しい出産方法か」ではなく、「母親が安心して子を産み育てられる環境がある」ということだと思う。
痛みに不安があるなら麻酔は一つの選択だと思うし、水中分娩をしてみたい、自宅で産みたい、という声に応えられる環境を整えることも「出産・子育て支援」の一環なのだと痛感した。

「あなたのもとで将来、自分の子を産みたいです」

10代の女性たちが、その方にキラキラした目でお願いしていた。

「近いうちにイギリスに帰ってしまうのよ」

「じゃあ、イギリスまで行って出産しようかな、笑」

そのやりとりを見ながら、私もこの方にお世話になりたいな、と素直に思った。

病院や保育所、仕事との両立環境など、出産・育児にまつわる関心ごとは数多くある。けれど、「産む場所」だけでなく、「どう産むか」という母親の希望が尊重される社会をつくることも、出産・子育て支援の大切な一部だと、あらためて感じた出来事だった。

株式会社sinKA 村山