ここ数年、世界のクラウドファンディング市場はITの進化と歩調を合わせるように目覚ましい進化を遂げ、今では5000億市場に成長しているという試算もあります。
インターネットではロングテールを対象としたビジネスモデルが成立する強みがありますが、不特定多数から少額を集めるということを目的としたクラウドファンディングはその強みを活かし急激な成長を遂げています。
特に欧米おけるクラウドファンディング市場は資金流通の仕組みの一つとして認知され、大きく分けて購入型、寄付型、融資型、投資型の4つからなり、金額の規模も大小含め様々なサービスや活用がされ、目的や手法がユニークなものはニュースとして世界中で話題となることもあります。
一方の日本では、現状としては盛り上がりを欠いていると言わざるを得ません。その市場規模は成長してはいるものの世界と比して100分の1以下であり、GDP世界第三位の経済大国であることを考えると残念な状態が続いています。
そのような中、今年は日本でも大きな動きがありました。2014年5月23日に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が可決されたのです。実際の施行は来年からとなるようですが、これが施行されると日本でも実質的に株式型クラウドファンディングが可能となり、未上場企業が1億円を上限にインターネットを活用した公募増資ができるようになります。
どちらかというと善意による資金流通のプラットフォーム的な色合いが強かった日本のクラウドファンディング市場は、この法整備により資本主義的な市場原理が働き別次元へ移行していくでしょう。
市場規模の拡大の中で、従来までの「善意による資金流通」という色合いのある市場も拡大、社会課題解決を目的としたビジネスへの投資などが加速していくという肯定的未来図を想定すれば、社会課題解決の担い手としての企業という位置づけがより明確となり、様々な課題解決に向けた取り組みがよりチャレンジングにできる状態が創出されることになります。
また、これまで社会課題解決の担い手として活躍してきたNPOも投資対象として存在し得る状態となることで、日本のNPOが成長していく上でも大きな転機を迎えることになります。
日本の場合、NPOが投資対象として投資家から見てもらえるような存在感を出せるのか、という点については大きな課題があると言えます。最近は事業型のNPOも増えてきてはいるものの、まだまだ投資対象と見てもらえる団体はごく少数です。
クラウドファンディングがこれからますます活性化する中で、NPOと企業は「社会課題の解決」という事業において健全な競走を繰り広げてほしいと思います。社会課題の解決方法を競い、最適解は何かを互いに模索し、それに対して投資がされていくことは社会全体に多くの刺激を与え、イノベーションを生む土壌となるでしょう。
そして、その良質な資金循環市場の中での競走によりNPOも磨かれ、企業は新しいマーケットや新規事業創出の手がかりと経験を積んでいくことができるでしょう。
クラウドファンディングの未来は光と影が伴うものとなります。悪意をもってこの仕組みを使う人も確実に増えるでしょう。
しかし、社会課題の解決という側面で見た場合、クラウドファンディングは間違いなく社会にとってプラスとなる資金流通の仕組みの一つです。その優れた仕組みをどう活用するのか、それを法制度を含めてどのようにサポートしていくのか、今はそれが問われている黎明期にあると言えます。