2007年、今年の日本企業のCSRはどのようになっていくのだろう・・・と思いを巡らせていた年初は、いきなりの不二家の不祥事で幕を開け、連日の報道となっている。
その中で「パートに期限切れの牛乳を押し付けていた」とか「三秒ルール(床に落ちても三秒以内に拾えば良しとする意味不明な現場での暗黙ルール)」とか、様々な実態が明らかになる中、個人的に不二家の一番の問題と感じたのは、役員からのこのコメント
「事実を公表したら雪印の二の舞になると思った」
である。
今更、「一体、あなた方は雪印や三菱自動車といった一流ブランド企業による一連の不祥事をどのように見ていたのか?」と問う気にもなれないお粗末なセリフ。
この一言は不二家の危機管理体制のすべてを物語っている。このような危機管理体制の組織であれば、次々と明らかになる様々な実態は推して知ることとすら言っていい。
もし、不二家が
「事実を公表しなかったら、雪印の二の舞になると思った」
とコメントできる企業であったならば、そもそもこんな不祥事は起こらない組織であったろう。
このトップ陣の幼稚な危機管理意識と組織全体にはびこるずさんな工程管理、これは決して独立した問題ではない。
「ボトムアップで腐っていく組織はない。組織は上から腐りはじめて崩壊する」という組織論は、不二家にも忠実に当てはまる。
このトップ陣の不勉強が招いた結果の一番大きな責任は、国民の食の安全に対する信頼が云々と大袈裟に取り沙汰されているが、不二家のお菓子を食べなくても国民生活に支障があるわけでもないわけで、それよりも不二家で働く多くの従業員とその家族の生活を、もしかすると人生設計そのものを変えてしまったであろうことにある。
CANPANでは、2006年11月から東証一部上場企業1,700社+αのCSRの情報公開に関する調査結果を一覧で見ることのできるデータベースを公開した。
その理由の一つに、不二家に見られるような悲劇を各社からの、できれば自主的な、情報の公開によって社会から無くしていきたいという思いがある。
我々の調査対象が、まずは東証一部上場企業、と限定したのは、マンパワーや予算的、時間的な制約も大きいが、社会的責任という点において影響度と共に非常に重要な役割を担わざるを得ない日本の大企業のCSRの実態はどうなっているのかを把握しようという意味合いが大きかった。
今回の不二家の不祥事は、CANPAN CSRプラスが果たさなければならない役割について、あらためて考える良い機会となった。