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笹川良一氏

学生への就職セミナーで、「なぜ日本財団に入ったのか?」という質問を受け、「『日本最後のドン』『右翼の親玉』などと散々マスコミに叩かれていた笹川良一という人を一目見たかったから。」と答えた。

田中角栄氏と並んで、自分の中では心にひっかかる存在だった。
マスコミは悪い悪いと書きたてるが、自分の中ではどうも腑に落ちなかった。

田中角栄氏の場合、「収賄はたしかに悪いことだろうが、彼の政治家としての功績がなぜその一件だけで全面否定されなければならないのか? それが正論なら、それでもなお彼を国会に送り込み続けている国民はどうなんだ?」という疑問が常にあった。

そして、自分なりに調べていくうちに、彼の政治的手腕は日本にとって有益だったという結論と、よく言われる「アメリカを無視し、独立国家日本として行った日中国交正常化に伴うアメリカ陰謀説」を知る。(これの真偽は私にはわからない)

これは、自分が歴史が好きで、日本書記にせよ、吾妻鏡にせよ、信長公記にせよ、時の権力者の意向なしに客観的な歴史書などは存在しない、という視点を近代史にも当てはめて考えた結果でもあった。

歴史書は、メディアが発展していない昔では、重要なメディアの一つである。それを権力者が利用しないと考えるほうが無理がある。
伝えられる肖像画だって、どこまでホントかわかったものではないが、イメージは大切なのでああいう形で残されていることはありがたかったりする。

それはさておき、田中角栄氏は私の就職活動時にはすでに引退していたこともあって、会いたい人物ではなかったが、故笹川良一前会長はまだ現役でおられた。(写真はWikipediaからお借りしました)

二人とも日本の歴史に名を残す人物、ぜひ会ってみようと思ったのであった。
そして、本当に悪い人だとわかったら、それはそれで、日本財団をすぐに辞めればいいという、人生の寄り道的なとんでもない動機で入ったのであるが、それをそのまま学生に話をした。

その話には反応してくれたが、笹川良一という名前にはなんとなくピンと来ていないようだったので、「笹川良一という名前を知っている人どのくらいいますか?」と聞いたところ、ビックリ・・・

参加していた学生約200名のうち、笹川良一という名前を知っている学生がわすが数名しかいなかった困った

国際貢献とか社会福祉関係の仕事を探している学生にとって、笹川良一前会長という存在は、フックしないらしい・・・と思うと同時に、歴史とはそういうものかという気持ちになった。

おそらく、笹川良一という人物は歴史が評価する大人物の一人である。
私は聖徳太子や織田信長に会っていないから知らないけれども、彼らの功績は知っている。
笹川良一という人物の功績もやがて明らかになっていくだろう。

同世代に生きるということは、リアルであるが故、自分が体験していることが歴史であるという認識を持ちにくいこととイコールだ。
自分達が生きているこの時代は、将来の人々にどのように映るだろう。

歴史が評価するであろう笹川良一氏が創り上げた日本財団はその歴史の中で何をするだろう。興味は尽きないと同時に、自分がその中で働いていることに、少しの違和感とたくさんのやりがいを感じる。