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コストゼロのCSR広報 -その2-

スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。

その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。

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■横並びのCSR広報にコストをかけるな

前回の号で、「コストゼロで行うCSR広報のその1」を書きました。今回はその2として具体的な手法を検証してみましょう。

同業他社が気になる・・・。これは、ことCSRにおいても当然のことですが、CSR広報に関しては、あまり意味がない場合があります。

ライバル会社のA社が取り組む先進的なCSRの取り組みを業界紙などの記事で発見し、わが社でも取り組まないといけないということで、さっそくそれに取り組んだとします。

その次に、その取り組みを同じように世の中に知ってもらいたい、広報したいということになったとしましょう。それは広報に値する内容でしょうか?

CSRというものが持つ特徴として、多少のトレンドはあるものの、ここ数年で企業が最低限取り組まなければならないCSRはすでに体系化され、ガイドラインという形で世の中に広まっています。

これらも年々進化してはいますが、抜本的なところで大きな方針が変わるというものではなく、世の中の趨勢に合わせてマイナーチェンジされているという程度です。

参考書的に言えば「これだけやっておけば落第しないCSR」は、すでに出回っていることになるわけですが、これらのCSRは会社として取り組む必要はもちろんありますが、広報するには値しません。

なぜなら、これらのCSRを宣伝するのは「守りのCSR広報」であり、何か問題が起こった時に「御社はそんなことすらしていなかったのか!」と糾弾されることから守る盾の役割を果たすものに過ぎないからです。

少し前に「弊社はコンプライアンスに積極的に取り組んでいます」という不思議な広告を目にする機会が多かったのを覚えていらっしゃるでしょうか?
「コンプライアンス」、日本語では「法令遵守」と訳されていますが、「私たちは法律を積極的に守っています。」とわざわざ予算を使って広報していたわけです。

法治国家の日本で活動する会社が法律を守るのは当たり前の話です。公言するようなことではありません。むしろ後ろめたいことがあるからわざわざ広告しているのではないかと勘繰られるような恥ずかしい広告で、感覚がズレているとしか言いようがないものでした。

また、最近では、本業と全くつながりが見えないまま「東南アジアで植林を行っています」というようなCSR広告が目立ちました。この行為自体は決して悪いわけではありませんが、もっとCSRの本道で取り組むべき課題があるのに、その時のCSRのトレンドに流されてCSRそのものにも広報にも無駄なお金をかけてしまった悪例です。

これが先の横並び広報の怖さです。他社もやっていることを負けないように広報する・・・これではかけたコストに見合うだけの成果を得るのは困難です。

自社の就業規則を広報する会社が無いのと一緒で、ガイドラインに沿って行っているCSRを広報しても他者との差別化も図れず、新鮮味も面白味もありませんから、わざわざ予算を使って広報する意味などないのです。

では、CSR広報に値するものとは何でしょうか? これを見つけることがコストゼロのCSR広報を達成する上でのキーになります。

■「攻めのCSR広報」にこそ活路 

それは、他社には無い、自社のオリジナリティを打ち出したCSRを広報することです。最高なのは、それが本業と直接結びついていて、さらに利益を生むものであるというケースです。

例えば、以前にもご紹介しましたが、ユニクロが行っている「一つの店舗に一人の障害者を雇う」というCSRの事例です。

これは障害者の自立支援という視点から様々なメディアに取り上げられました。しかし、ユニクロは純粋に障害者の社会参画や自立支援という視点からこの採用を行っていたわけではありません。

障害者にとってやさしい売り場は売り上げが伸びる、障害者とのコミュニケーションによる社員の行動の変化が顧客満足度を上げ、また売り上げが伸びるということを実践しただけなのです。

しかし、結果は単に売上が上がるだけでなく、ユニクロのこの事例を第三者としてのメディアがパブリシティでどんどん取り上げることで彼らのブランドイメージの向上に大きな役割を果たしました。

一方で、彼らが社会貢献として行っているアフガニスタンにフリースを贈るという活動などは、NPOとの協働という面を除いてはパブリシティではほとんど取り上げられません。これは他にも同じような活動をしている会社がたくさんあって話題性が乏しいからです。

コストをかけないCSR広報の最善策がパブリシティであり、その効果は自分た ちで広告費を出して宣伝する比ではないことを先の号で書きましたが、その具体的な手法はこのようなオリジナリティをいかに売り出すか、ということに尽きます。

これこそが「攻めのCSR広報」であり、CSR広報を単なるコストに終わらせないための重要な視点なのです。

積極的にCSRに取り組んでいる企業の場合、必ず何かしら自社ならではの取り組みというものを持っています。それに気づいていない会社が多いのですが、これを再発見した上で、メディアに売り込むことで記事化される可能性をぐっと高めることができます。

そして、そのベースとなるのは「守りのCSR広報」、いわゆるやっておかなければならないCSRとその情報提供です。いくら特定のCSRで光っていても他にやるべきことをやっていない会社を記事化するというのは記事化する側にリスクがあります。

この「守りのCSR広報」は地味でいいので常に情報を提供しておくことが大切ですのでウェブが一番です。したがって、これにかけるコストは本当にミニマムで十分です。(車のカタログで言えば「諸元表」のようなものですので、無ければカタログになりませんがメインに据えるものではありません。)

それを無料で可能にしているのが私が関係している下記の「CANPAN CSRプラス」というサイト内のCSR情報データベースです。ここに登録し48項目を埋めるだけで「守りのCSR広報」として必要な情報提供はクリアできてしまいます。(取り組みの質的評価はまた別次元で存在しますが、それは次の課題です。)

■CANPAN CSR プラス■
http://canpan.info/csr/

ここでは、登録情報を元にポイント化され、さらにグラフ化されますので、自社のCSR診断にも使えるようになっていますが、中小企業にとっては東証一部上場企業に混じって自分たちのCSR情報が並ぶことで意外な信頼確保につながるということも報告されています。

また、自分たちのサイトではない場所で会社の情報を開示することによる信頼性の確保という点でも有利なことがわかってきています。

このようなサービスを利用して、「守りのCSR広報」はミニマムコストでありながらきちんと情報を提供し、それに割かれていたコストやマンパワーを今度はオリジナリティ溢れる「攻めのCSR広報」に回してパブリシティを狙う。

この手法を使って、ほとんど対外的なコストゼロで十分なCSR広報は可能になるのです。コストがかからない分リスクも無いのでトライしてみる価値は十分にあります。

私たちがこのサイトを無料で提供している背景には、企業のCSRの取り組みを一覧化することで市民にもう少し企業のCSRの取り組みをきちんと理解してもらいたいという思いが第一にある一方、企業にはこの部分でコストをかけて疲弊してもらいたくないという思いもあります。

なお、私の所属する日本財団では、このCANPAN CSR プラスに自ら団体登録し自分たちのCSR情報を開示しています。これをCSR報告書がわりに使っていて、問い合わせがあった際などはこのウェブページを見てもらうことにしています。
したがって紙媒体などでの報告書やレポートは一切発行しておらず、コストを抑えています。

ぜひ一度「CANPAN CSR プラス」を覗いてみてください。まだCSRに取り組まれていない会社の皆さんにとっても参考になる情報が詰まっています。

■ここがポイント■
1.「守りのCSR広報」にかけるコストはミニマムで十分
2.「攻めのCSR」の発掘に知恵とマンパワーをかける
3.発掘した「攻めのCSR」でパブリシティを狙う

■こちらもぜひご覧ください—————————————
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