私たちが当たり前のように享受していた安定した電気の供給、それがいかに危うい砂上の上に成り立っているものであったかを今回の大震災は教えてくれました。
今夏、私たちは様々な我慢を強いられる夏となるでしょう。
しかしそれは、「限りある資源」と言葉では言いつつも、自分たちが生きている時間軸の中では無限にあるような錯覚を持ってきた私たちを現実の世界へと引き戻してくれる貴重な試練であると言ってよいものなのかもしれません。
そして、自分の家を流された多くの方々が仮設住宅へ引っ越しをするのも、この夏にかけて一気に進んでいきます。
私は現在、被災地の仮設住宅の実態を調査していますが、一言で仮設住宅と言っても本当に多様な仮設住宅が存在します。そこは建設を請け負ったそれぞれの業者の仕事への取り組み方が如実に出ている現場でもあります。
今回は、私たちのすぐ身近にありながら、なかなかその効用に気づくことのない「窓」とその「窓」がもたらす効用について真摯に取り組むマテックス株式会社(以下、マテックス)をご紹介したいと思います。
マテックスは、「窓を通じて社会に貢献する」を経営理念とし、付加価値の高いガラスやサッシなどの製造を行っている会社です。
彼らの商品の一つに「エコ窓」という窓ガラスがありますが、日本の住宅の窓をすべてこの「エコ窓」に替えれば、1700万トンのCO2削減につながり、これだけで京都議定書の削減目標6%のおよそ4分の1を達成できるそうです。
仮設住宅の大きな課題の一つとして、入居者の高齢化率が高い中にあって、断熱性の低い室内での熱中症が懸念されています。しかし、この「エコ窓」のような窓を導入して窓からの断熱性を高めることができれば、このリスクも大きく軽減することができるでしょう。
マテックスの社長である松本浩志氏は、「窓の断熱性を高めることで、年間14,000人に及ぶ高齢者の突然死を減らすことが可能」と、窓の持つ社会性の高さを熱く語ります。
高い技術力によってエネルギー効率の高さを社会に提供することそのものも貴重なCSRの取り組みの一つと言えます。
しかし、マテックスの取り組みで最も注目すべきは、それによって社会課題を解決しようとする姿勢と実行であり、それこそがCSRの本質的要素であるという点です。
今後、企業のCSRとして社会課題の解決を本業で行っていくことはますます注目されていきます。
マテックスの取り組みはその良い事例の一つであると言えます。