■市民活動と企業の寄付のあり方を探る■
前回の続きである、企業の寄付のあり方を考える第二回目は、「投資的な意志を持った価値ある寄付」のあり方を考えてみましょう。
昨年末、私が担当している日本財団公益コミュニティサイト「CANPAN(カンパン)」で以下のような募集をかけました。
○寄付先募集案内○
http://canpan.info/open/tanosupsyo/0000000446/tanosapo_detail.html
これは、ある教育系の企業が環境系の市民活動団体に80万円の寄付をしたい、という申し出があったことからスタートした募集です。
これを私たちは「市民活動と企業の寄付のあり方を探るモデルプロジェクト」と冠をつけて展開しました。
寄付先は、
1)環境系の活動をしている団体
2)信頼できる情報発信ができている団体
から選びたいという企業からの申し出でした。
情報発信という点では、CANPANの団体情報データベースでは、情報の発信量の一つの指標として、「情報公開度」が★印でポイント化されています。
その三ツ星以上の団体をその対象としました。
そして、団体を選ぶのは、その企業と私たちとの共同作業です。
結果、下記のニュースで発表された二つの団体に40万円ずつが決定しました。
○団体決定○
http://canpan.info/open/news/0000003524/news_detail.html
この段階で、申し出のあった企業が「ウィル・シード」という会社であることなどが公開され、モデルプロジェクトがスタートしました。(途
○株式会社ウィル・シード○ 中、企業名を明かさなかったのは、ルールを無視して直接交渉するような団体が現れることを危惧したためです)
○株式会社ウィル・シード○
http://www.willseed.co.jp/
現在、これらの寄付先団体と一緒に、ウィル・シードさんの寄付をどのように市民活動側がバリューを出せるのかを検討しながら進めています。
団体の履歴書にあたる「団体情報データベース」にはウィル・シードさんのバナーが貼られました。
○仙台森林アドバイザーの会○
http://canpan.info/open/dantai/00002875/dantai_detail.html
○仙台市森林アドバイザーの会ブログ○
http://blog.canpan.info/morittosendai
そして、1月14日付の毎日新聞で、このことが記事化されました。
■CSRの現場から 教育関連事業、ウィル・シード /東京■
http://mainichi.jp/life/ecology/partnership/activity/koukenbito/archive/news/2009/20090114ddlk13040305000c.html
ウィル・シードさんは、このような望外の展開は予想していなかったとおっしゃっていますが、市民活動側から企業からの寄付に対してお返いうのは実は色々あるのです。
■意志ある寄付が社会を変える■
ウィル・シードさんもそうですが、多くの企業からの寄付は「儲けたお金の一部を社会に還元したい」という漠然とした、シンプルな目的で行われます。
これはこれでとても素晴らしいことですが、前回のような寄付する側(企業側)と寄付された側(市民活動側)との対等の関係性を進めるためには、これにもう少しスパイスを効かせる必要があり、それがCSR広報的にもベストです。
それは、「意志ある寄付」は、「社会を変えることができる」からです。今回の「市民活動と企業の寄付のあり方を探るモデルプロジェクト」では二つの課題を投げかけています。
一つは、「企業は寄付する先を正しく選んでいるか」であり、もう一つは「寄付に対して市民活動は責任を果たせているか」です。一年間に企業から市民活動へ寄付される額は決して少ないものではありません。
しかし、その中身を金額ベースで見てみると7割~8割が一部の団体に集中して寄付されているということがわかります。世の中に溢れる社会的課題の多様性を考えた時、この資金的な偏りはあまり状態としてはよくありません。
もし寄付者側がもっと「社会を変えたい」、「社会をこんな風に良くしたい」という意志を発揮すれば、これらのお金はきっとより多くの成果を生み出し、社会は変わっていくことができるでしょう。
そのためのパートナーがNPOやボランティアのセクターの人たちなのであり、企業の寄付は彼らに「社会を良くするための投資」をすると考えるほうが高い満足感を得られると思います。ここで言う「社会を変える」とは、必ずしも大きなうねりを意味しません。
それはある商店街の問題解決であったり、地域に住む独り暮らしのお年寄りの生きがい発見のような個別の変化かもしれません。
しかし、自分たちの寄付によって社会のこの部分が変わった、または変えたという明確な成果の達成とその確認こそが、その企業のブランディングにつながるものであり、社会への訴求力を持ち、同時に株主や従業員の満足に結びつくのです。
新聞などで取り上げられる社会貢献的な記事の一つ一つを見ていると、実はそのような細かい社会の中での出来事がストーリーという見え方で世の中に周知されているだけということに気づかれると思います。
利益の一部を削って社会貢献をするという時、ぜひ「なんのために、どこにいくらの寄付をするのか」、「その結果、自分たちは何を得たいのか」を明確にし、「意志ある寄付」を行ってみてください。今まで漫然としていた寄付に新しい価値が付いていることに気づかれると思います。
☆ここがポイント☆
1.寄付する時には投資と同様、成果を考える
2.成果目標の視点は、社会と株主、従業員と共有できる目標を軸に考える
3.寄付先は、自分たちが理想とする社会実現のためのパートナーとして考える