「スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。
その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。
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■こんなCMだけはしてはいけない見本
ご覧になった方も多いと思いますが、最近、ある生命保険会社が「森林保全活動を通じて環境問題に取り組んでいます」というCMを頻繁に流していました。
生命保険会社は、過日の様々な問題の解決と社会的信用回復に向けた施策を打っていかなければならない状況にあり、このCMもその一環として莫大な広告費をかけて展開されたものでしょう。
このCMについて、CSRのセミナーに参加していた大学生に聞いたところ、「見え見えでかえって信頼できない」、「今のこのタイミングで生命保険会社が環境保全の取り組みをCMで流す意味がわからない」という回答が返ってきました。
一連の生命保険会社の問題について快く思っていない人であればあるほど、このような感想を持ってしまうことでしょう。つまり、莫大な広告費をかけて、社会にマイナスイメージを植えてしまうという期待とは全く反対の結果を引き起こしてしまっています。
CMで言っていることが間違っているわけではありません。環境問題を自分たちの問題として考え、それに企業として取り組むことは大切なことで評価に値します。しかし広告という目的から結果だけをみれば、全くの失敗です。
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか? それは、一言で言うと 「浅薄な戦略性と目的意識のないままCSRを安易な形で自社の大切な広告に使ってしまったために起こった」のです。
CSRは、会社とそれを取り巻く社会との信頼の上に立脚する大切なものです。
したがって、その会社が社会の中でどうあるべきかの戦略性と、それとがっちりと結びついたCSRへの取り組み、この二つの発露として展開される広告でなければ見る人には何も訴えるものにはらず、タイミングも悪く、内容もないものになってしまうのです。
先のCMは、広告代理店のアイディアをそのまま取り入れただけという可能性も高い気がしていますが、この広告を打つことを決めてしまう時点で、この会社のCSRへの取り組みが底の浅いものであることを証明してしまっています。
■CSR広告は難しくない
では、CSRを広告に取り入れることは難しいことなのでしょうか?
CSR広告が最もその効果を発揮するのは、企業のブランドイメージのアップを目的とした広告であり、この失敗例もそれを狙って作られたものでしょう。この目的意識さえはっきり持って作れば、さほど難しいものではありません。
しかし、そこには、先に述べたとおり、「社会の一員として自社があるべき姿」というものが描けていることが前提であり、それが整わないうちは安易に使わないほうがいいのです。
「そんなこと言ったって、あるべき姿を定義するのは難しい」と思われた方は自社の企業理念をもう一度思い出してください。そこにはおそらく回答がすでに書いてあるはずです。
先の号で「企業理念は社会との約束事」ということを書きましたが、CSRを広告に使おうとする場合、この約束事を守るために何をしているかを訴えれば、ミニマムの要素はおさえた広告が打てるということになります。
具体的には、「わが社の経営理念はこれです。○○○ ○○○ ○○○ この三つを果たしていくことをみなさまにお約束します。」これだけで立派なCSR広告です。(この経営理念が社会に受け入れられるものであるということは大前提です)
二年前の年末に松下電器が展開した「お詫び広告」、あのシンプルなCMに社会は松下の真摯さを感じて感動し、結果として売上高は前年同期比4%増の2兆3984億円、営業利益は47%増の1294億円を記録したのです。
このCMは、松下がブランドイメージをアップさせようと思って展開したのではなく、自社の企業理念から判断して、なすべきことをしただけにすぎません。
しかし、結果は松下ブランドを大きく躍進させたのです。
つまり、CSR広告を展開するならば、まずは自社が社会の中でどのような役割を担い、それを果たそうとしているかをベースとして、それを達成するために社会に何を理解してもらいたいかをデコレートすればいいのです。
それは広告の持つ意味を「商品を売るためのもの」と定義するならば、「自社の経営理念とその実践」を商品として売るためにどういう広告を打つか、と考えるとわかりやすいかもしれません。
■ここがポイント■
1.せっかくのCSR広告が会社のマイナスイメージづくりに貢献
2.CSRの広告は社会との信頼関係の上でしか成り立たない
3.CSR広告とは企業の理念と実践を商品として売る広告である
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