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CSR広報と課題解決

■ターゲットの絞り込み

前回の号で、自社のCSRの強みを分析し、そのCSRの取り組みを誰に知って欲しいか、つまりターゲットは誰かを考えるための分類を書きました。今回は、分析結果とターゲットの絞り込みを広報化するための手法を考えていきましょう。

ターゲットとするレイヤーは大きくわけて四つです。
(各項目の「型」に対する説明は前号をご一読ください。)

1.自己完結型 → 従業員、就職活動の学生など

2.パートナー連携完結型 → BtoBのパートナー企業など

3.地域社会巻き込み型 → 地元商店街の買い物客、商工会議所、行政など

4.お布施型 → 社会一般

社会との接点の幅の広さは1<2<3<4の順です。数字が大きくなるほど、社会との幅広い接点が求められるため、CSRを広報する上で「何を知ってほしいのか?」を明確に打ち出す広報が重要になります。

ここできちんとブレないコンセプトを設定しておかないと、ターゲットにきちんとリーチできる広報にはなりません。多くの会社の間違ったCSR広報はこの部分で失敗しているケースがほとんどです。

もう一つのポイントは、「欲張らないこと」です。せっかくお金をかけて周知するのだから色々知ってほしい、これはもっともですが、CSRというものが会社の取り組みにおける幅広い領域をカバーするものであるため、焦点がボケやすいのです。

極端に言えば、「ワンターゲット、ワンキャッチ」ぐらいに絞ることが望ましい。自社の従業員に「これだけは知ってほしい」、就職活動に来る学生に「これだけは知ってほしい」ことを一つだけ挙げ、全力投球するのです。

例えば学生に伝えたいCSR広報の場合、メインの狙いは「欲しい人材」を獲得するためですから、その広報の内容に響く人材こそ、自社に来て欲しい人材であるというメッセージが伝わるものでなければなりません。

「それはそうだが、わが社にはそれに値するものが見当たらない」ということになった場合はどうすればいいでしょうか? 実は、この気づきこそが一番CSR広報のメリットかもしれないと最近思います。

つまり、CSR広報は、自社が発展する上で何が欠けているのかを気づかせてく れる最も優れたツールなのではないかと思うのです。これはもう少しまとめた形で書いてみたいと思っていますので、今回の号ではこのくらいにしておきます。

では、続いて具体的な広報イメージを持つために先の1~4別に広報のテーマをざっくりと掘り下げてみましょう。

■CSR広報は自社の信用獲得ツール

皆さんの会社がCSR広報をしたいと考える理由は何でしょうか? 「物を売りたい」、「顧客を増やしたい」、「従業員の働く意欲を向上したい」、「良い人材を獲得したい」などなど、色々なことがあると思いますが、CSR広報のすべてのニーズの根幹は「自社の信用獲得」ということでしょう。

信用を獲得することで、販売や顧客(取り引き先も)の増加、従業員との絆、人材の獲得などが今まで以上に円滑に進むことを望んでいらっしゃるのではないでしょうか?そうだとすれば、最も信頼を獲得したいターゲットとは、逆に言えば、思っているレベルの信頼を獲得できていないということでもありますので、「自社が抱えている課題」ということになります。

これで、自分たちが最も信頼を獲得したいターゲットが誰かと何を訴えるべきかが見えてくるはずです。

これを踏まえた上で、4つのターゲット別に広報の仕方を検討しましょう。

1.従業員や就職活動の学生に対する広報

実は伝わっているようで最も伝わりにくいのが「企業理念」です。日々の業務が理念とどう結びついているのかを見せるのは経営者の責務でもあります。

このコラムでも何度か書かせていただいていますが、CSRというのは企業理念と密接な関係にあり、企業理念の広報はそのままCSR広報に結びついている場合も少なくありません。

また、従業員に対するCSRの取り組みはもとより、社外に対するCSRの取り組みを社員が知らないというケースが非常に多いので、これを伝えることはとても意味があります。特に、社員が自分たちの会社の一番良いところを知らずに働いているのはもったいないことです。

従業員と学生に対する広報は、まずはこの二つが最も大きなテーマとなるケースがほとんどで、特に従業員に対しては繰り返しが大切です。

2.BtoBのパートナー企業に対する広報

これはサプライチェーンの問題にも密接に絡む問題なので、非常に難しいのですが、ざくっと切るならば「安心して取引できる企業である」ということを訴えることしかありません。

以前はそのためにISO14001など、認証を得ることで信頼を確保しようということも盛んでしたが、今はそれだけで信頼を獲得できるほど甘くはなくなってきました。

そこで、いかに自社が多くのステークホルダーと接点のある企業であるかを訴えること、つまり第三者とのつながりを使った信頼獲得の広報につなげることが大切です。

3.地元商店街の買い物客、商工会議所、行政など

これは、2.によるステークホルダーとの接点の多様さに加え、地元での自社の役割というものを自分たちのとらえ方で構いませんので打ち出すことに尽きます。より具体的に言うと、「○○のような地元の方々と、○○な街を作りたい」というようなテーマ設定です。

4.社会一般 

どうしてもメインはイメージ広告であり、CSR広報そのものと言えるかは微妙ですが、1.と同じように会社の理念を社会に伝えることになります。
ここは欲張りたくなる部分ですが、「わかりやすく、本業につながるキャッチコピー、一つ」ということを念頭に置いて考えてみるとよいと思います。

それぞれのターゲット別に簡単にテーマを上げてみましたが、この方法以外にもやり方はもちろん多種多様にあります。

ケースバイケースでやり方は変えていくことになりますが、それを考える時の大切な視点として、「獲得したい信頼のレベル」と「今の現状」とのギャップを埋めるために何を広報するべきかを常に考えるようにしてください。

そこには会社が抱えている課題が存在しています。先に書きましたが、CSR広報はそれを浮き彫りにしてくれるのです。

その課題解決によって今まで以上の実績が上がれば、それは一過性のものではなく、持続性を持った実績となるはずです。なぜならその広報が実を結んだ時は、次につながるために必要な自社の信頼が上がっているからです。

それがCSR広報の最も大きな役割であり、広報として経費をかける価値があるものだと言えるのです。

■ここがポイント■

1.CSRを広報しようとする時、自社がさらに伸びるために欠けている問題点が浮き彫りになる
2.問題解決のために何を誰に広報すればいいのかが見えてくる
3.CSR広報の成功は、一過性の宣伝に終わらない持続性を持つ(だからこそブランディングにつながる広報とも言える)

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