「スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。
その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。
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■社会とつながる製品づくり
前回、プリウスがトヨタのCSRの具現化であるという話を書きました。
プリウスの売り上げは、第二位の軽自動車の月間売り上げを引き離して単独首位を続けています。
自動車業界全体の売り上げが昨年度比で10%以上のダウンの中で、この独り勝ち状態を作り出した要因はどこにあるのでしょうか?とは言いつつも、これだけプリウスが好調であるにも関わらず、トヨタは三期連続の赤字決算を続けており、厳しい経営環境に置かれているのはトヨタでさえ例外ではありません。
そんな中、豊田章男社長は、「もっといい車を作る」というブレない軸を定めたと言っています。
それは「何台売るか」や「どれくらい利益を出すか」という数字の積み上げによる製品開発ではなく、地域に喜んでもらえる車とはどんな車か、その適正価格はどのくらいかをまず考える車づくりと経営だと言います。
まさに三代目のプリウスはこうした発想を元に作られた車なのであり、この「社会のための車」づくりを目指して作った車が、社会から受け入れられたということです。
この事実は、不況下における持続的な企業経営とモノづくりをする全ての企業に大きなヒントを与えてくれていると言えます。
もちろん、プリウスが成功した背景には、トヨタの卓越した技術力をはじめ、環境への関心の向上、ガソリンの高騰、またはエコカー減税など複合的な要因が後押ししているのは事実ですが、これらの要因もつまるところは社会からのニーズと、その反映でしかありません。
■売れないCSR製品に意味なし
ではここで、トヨタのようにCSR的なマインドを主軸にして作るモノづくりがそのまま会社の利益に直結する場合、それはCSRと呼んでいいものなのでしょうか?
答えはもちろん「YES」であり、もっと強く言うなら、CSR製品はどんどん売れて儲けが出なければいけないのです。
それでこそ、企業のCSRの取り組みはコストではなく投資になるはずです。
プリウスの好業績を受け、自動車各社は血眼になってトヨタの追撃をはじめています。CO2などどこ吹く風でトラックのエンジンを乗用車に積んでいたようなアメリカの自動車メーカーすら、2011年にはハイブリッドを出すと発表しました。
トヨタ発のCSR製品は、世界中の他の競合メーカーを動かし、それが広まることで終着的には世界から自動車のCO2排出量は激減していくという好循環を加速させるきっかけを作りました。そういう意味で、プリウスは革命的な製品と言えます。
CSRという経営理念とその実践は、会社が潰れずに生き残り続けるために必須ではありますが、一方で、それは利益と相反するものではないということをもっと日本企業は理解し、製品づくりやその広告などに活かすべきです。
それなくして、CSR広報を想定しても表面的で意味のないものにしかならず、そもそも広報的価値がありません。
本当にCSR的な価値のある製品とは、売れてこそ価値が何倍にもなるものがあり、そこに広報され得る価値が生まれる好循環サイクルの製品なのです。
☆ここがポイント☆
1.プリウスは本当に「社会のための車」だからこそ売れた。
2.CSR製品は売れて儲けが出なければいけない。
3.CSR製品は、会社の持続的経営を守る好循環サイクル製品である。