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不確実な時代、「計画通りにいかないこと」を前提とした戦略設計を【オルタナ総研所長コラム】

※弊社代表の町井による「オルタナ総研所長コラム」

◼タイトル
不確実な時代、リスク管理の核心は予測ではなく「適応力」に
https://www.alterna.co.jp/169745/

■記事のポイント

米・イスラエルによるイランへの軍事攻撃でホルムズ海峡が事実上封鎖される事態に
日本の石油輸入の大動脈も脅かされ、エネルギー価格は再び急騰へ
不確実な時代だが、組織の「適応力」を高めることが、リスク管理の核心に

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米・イスラエルによるイランへの大規模軍事攻撃によって、ホルムズ海峡が事実上封鎖される事態となった。日本の石油輸入の大動脈も脅かされ、エネルギー価格は再び急騰している。未来が読めない不確実な時代だが、組織の「適応力」を高めることが、リスク管理のカギだ。

昨年の10月、IMF(国際通貨基金)のゲオルギエワ専務理事は、年次総会において「Buckle up(バックル・アップ)。不確実性こそがニューノーマルであり、それは今後も続く」と述べた。バックル・アップとは、「シートベルトを締めよ」という意味だ。これは単なる警告ではなく、経営の前提条件そのものの更新宣言と言えるものだった。

この不確実性の象徴的事象は言うまでもなく、今年2月末に起こった米国・イスラエルによるイランへの大規模軍事攻撃だろう。これにより長年、イラクの最高指導者であったハメネイ師が死亡した。

ホルムズ海峡が事実上封鎖される事態となり、中東情勢は急速に全面軍事衝突の段階へと移行、日本の石油輸入の大動脈も脅かされ、エネルギー価格は再び急騰している。

■不確実性に関する感度が麻痺していないか
■「計画通りにいかないこと」を前提とした戦略設計を
■「地政学的構造変化」を見逃すと大きなリスクに

ウクライナ、ガザ、そしてイラン——立て続けに起こる戦争を、私たちは「まさか」ではなく「また…」と受け止めはじめている。これは不確実性に関する感度がすでに麻痺し始めているとも言えるかもしれない。

これはすでに不測の事態がもはや「例外」ではなく「構造」になったことでもあり、まさにニューノーマル化しているということだろう。

紛争、気候変動、感染症、貿易摩擦——世界全体を巻き込むこれらの社会課題は、交互にではなく同時並行で押し寄せてくる。

かつての経営リスク管理は「有事と平時の切り分け」を前提にしていた。有事が来たら対応し、平時に戻ったら長期計画を再開する。

しかしIMFが「ニューノーマル」と宣言したのは、その切り分け自体が機能しなくなったということだ。地政学リスクと政策の不透明さが重なり合い複合的な下押し圧力となる中、「嵐が過ぎるのを待つ」という選択肢はもはや存在しない。

では、企業はこの時代にどう「未来」を設計すればいいのだろうか。大きく分ければ三つの視点が重要となるだろう。

■「計画通りにいかないこと」を前提とした戦略設計を

一つ目は、「予測する戦略」から「適応する戦略」への転換である。これまでのサスティナビリティ戦略は、「想定シナリオ」を起点に組み立てられてきた。1.5℃シナリオ、移行リスク、物理的リスク——それ自体は重要なのだが、そのシナリオの前提となる政治・経済・社会の安定が崩れてしまっている。

そのため、今後求められていくのは、「計画通りにいかないこと」を前提とした戦略設計だ。シナリオを固定するのではなく、複数の未来に対応できる組織の「適応力」を高めることが、リスク管理の核心になる。これは日本企業が最も苦手としている領域でもある。

二つ目は、短期対応と長期方向性を切り離さないことだ。エネルギーコストが急騰しても脱炭素への歩みを止めない。

調達を多元化しながらも人権デューデリジェンスを手放さない。目先の対応に追われて本質的な問いを先送りする組織は、不確実性が続くほど長期的な競争力を失うことになる。有事こそ、長期の方向性が試されることを忘れてはならない。

■「地政学的構造変化」を見逃すと大きなリスクに

最後は、「感度」を組織の能力として位置づけることだ。戦争が起きても「またか」と思考停止し、ガソリン価格だけを見て、その価格の背景にある地政学的構造変化を見逃すことは大きなリスクとなる。

数字の変化を読む力と、その数字の背景にある人・社会・自然に対する想像力、この二つの視点を組織の中で意図的に育てることが、サスティナビリティ経営の本質となる。

感度を失った組織は、ESGの開示は整えることができても、本当の意味での「持続可能性」を失うことになるだろう。

「バックル・アップ」。ゲオルギエワ氏の言葉の本質は、揺れを受け入れながら走り続けろ、という意味である。不確実性を嘆くのではなく、それを前提に設計された戦略と組織を構築すること。これが今、企業に求められる最も根本的な問いである。