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クマなどの被害が深刻化、まちづくりは発想の転換を【オルタナ総研所長コラム】

※弊社代表の町井による「オルタナ総研所長コラム」

◼タイトル
クマなどの被害が深刻化、まちづくりは発想の転換を
https://www.alterna.co.jp/160290/

■記事のポイント

クマによる人身被害やシカによる食害など、野生動物による被害が深刻化する
まちづくりには、野生動物リスクに対するレジリエンスな視点が不可欠に
自然から借りていた「場所」を自然に還していくという発想転換が重要に

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近年、クマによる人身被害、シカやイノシシによる食害など、野生動物による被害が深刻化している。これからのまちづくりには、「自然との共生」を前提とした野生動物リスクに対するレジリエンスな視点が欠かせない。これまで自然から借りていた「場所」を自然に還していくという発想を持たなければいけない。

■クマによる被害が過去最多ペースで推移する
環境省のデータによると、2023年のクマによる人的被害は過去最多の219人に達し、今年も7月末時点で55人と同様のペースで推移する。

政府は4月、改正鳥獣保護管理法を成立させ、これまでは一切認められていなかった市街地での猟銃使用を市町村の判断で可能にするなど、法制度も現実に合わせた対応を迫られる事態となっている。

■ハンターの高齢化、担い手不足も

しかし、その現場対応を担うハンターの数は高齢化に伴い激減している。環境省のデータによると、狩猟免許所持者は1975年の約52万人から2020年には約22万人まで減少し、うち約58%が60歳以上である。

この数には猟に出ていないペーパーハンターも含まれており、狩猟登録をして猟を行っているハンターは約13.7万人と免許所持者全体の63%程度だ。制度は前進したが、現場の担い手不足という課題はむしろ後退している。

■ネズミ被害で「400億円以上」の損失も
■鉄道のダイヤ乱れや幹線道路の通行止めも
■自然から借りた場所を自然に還せるか

そもそも野生動物が人間の日常生活圏に出没するようになったのは、気候変動による彼らの生活圏やエサの変化、人口減少に伴う里山管理の空洞化、捕獲体制の脆弱化など複合的な要因が重なった構造的な問題だ。これらは変化することはあっても私たちが望むような改善の兆しは見られず、年々悪化の一途を辿っている。

国際的にもこの問題は「Human-Wildlife Conflict(ヒューマン-ワイルドライフ コンフリクト、HWC)」として2021年にWWF(世界自然保護基金)とUNEP(国連環境計画)から共同報告書としてまとめられるなど、明確化されている。

例えば最近、カリフォルニアのアーモンド農園がネズミ被害で3億ドル(約440億円)以上の損失が推定されると報じられた。これは決して対岸の火事ではない。

こうした被害が価格高騰につながれば、日本企業の活動にも影響が出てくる。国内でも農林水産省によれば、2023年の農作物の被害額は164億円に達している。

クマの行動圏は、エサが不足する場合は100㎢を超えるとされる。川をつたっての移動によって都市部にも出没することが増えており、通勤・通学といった日常生活だけでなく、観光需要などにも影響しかねない状況だ。

■鉄道のダイヤ乱れや幹線道路の通行止めも

国土交通省によると、ロードキルの発生件数は全国で年間約12万件で、そのうちシカ、クマ、イノシシなどの大型動物との衝突が9000件近くにのぼる。この数には死体が回収されなかったケースは除外されている。

2024年度の人の交通事故件数が約29万件であることと比較すればかなりの数と言えるだろう。地方では列車とシカの接触も日常化している。それによる鉄道のダイヤ乱れや幹線道路の通行止めなどが交通・物流インフラに影響を及ぼし、私たちの暮らしや企業活動にも静かに影響を与えている。

人口減少により人間が少なくなったエリアは、当然のことながら野生動物の生活圏となっていく。その結果、このような自然との共生が強く求められる地域では人間側が我慢しなければならないことが増える。

もし人間と野生生物それぞれの生活圏に明確な境界線を引こうとするなら、中世ヨーロッパや中国の万里の長城のように高い城壁で町全体を囲むようなインフラが必要となってしまう。

そのようなまちづくりが非現実的なことを思えば、私たちは自然との共生を前提とした野生動物リスクに対するレジリエンスを今以上に持つ必要がある。

■自然から借りた場所を自然に還せるか

そのようなまちづくりはどうあるべきだろうか。それは人口減少社会における人間の活動エリアの戦略的縮小というような意味合いと同義語になる。つまり、これまで自然から借りていた場所を自然に還していくということだ。

しかし、これまで膨張することしか知らず、自然に対し傲慢ですらあった私たちにとってこれは未知の領域だ。

これまでとは全く異なるまちづくりの発想が求められることになるが、そのような意識と仕組みを私たちは持てるだろうか。これからの15年ほどの間に、その問いを私たちは何度も自然から問われ続けることになるだろう。