※弊社代表の町井による「オルタナ総研所長コラム」
◼タイトル
「地方創生2.0」は日本の未来をつくることができるか
https://www.alterna.co.jp/158670/
■記事のポイント
参院選が行われ、与党の歴史的敗退という形で幕を閉じた
この選挙に先んじて6月には「地方創生2.0」が閣議決定されていた
「稼げる地域経済圏」を目指したものだが、日本の未来をつくるのか
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先日、「日本の未来を占う」というキャッチコピーが躍った参院選が行われ、与党の歴史的敗退という形で幕を閉じた。この選挙の争点として、物価高や実質賃金の低迷、地方経済の衰退など、国民生活に直結する問題への対応力が各党に問われることになったが、それに先んじて6月には「地方創生2.0」が閣議決定されていた。地方に人材が還流・定着する「稼げる地域経済圏」を目指したものだが、日本の未来をつくることができるのか。
「地方創生2.0」はそのビジョンをこう掲げた。「人口減少と生産年齢人口の低下に真正面から向き合い、若者・女性などが活躍できる魅力的な就業機会を創出し、地方に人材が還流・定着するような『稼げる地域経済圏』を形成することが重要である」。
このビジョンについて異論はないし、ぜひ進めて欲しいとも思う。しかし、何年前から同じことを言っているのかと問いたくなる内容であることも事実だ。
「地方創生」という言葉が政策として正式に使われるようになったのは、2014年に石破首相が初代地方創生担当大臣に任命された時からである。
それ以来、すでに10年以上が経過した。この時すでに東京への一極集中が加速し若者が地元を離れてしまうこと、地方都市が空洞化し地方経済が人口減少と共に縮小していくことなどが重要な社会課題として認識され、その課題解決を期待されたのが地方創生だった。
■若者や女性は地方で働きたいと思うか
■「多様な地方」が価値を持つ時代に
■50年には世界の人口の7割が都市部に集中も
■人が集まる条件は多様性よりも「ニッチ性」
■「地方創生2.0」が日本の未来を占う
しかし、この10年、これらの社会課題は深刻化することはあっても改善に向かっているとは到底言えない状況が続いている。
それを踏まえて今回は、地方創生2.0で描く若者・女性にとって「働きたいと思える地方」とは何か、という点について考えてみたい。
日本という国は、地理的な要因もあっていびつな人口分布が特徴の一つだ。関東4県(東京・埼玉・神奈川・千葉)で日本の人口の約1/4を占めてしまう一方、日本の国土面積でこの4県が占める割合はわずか3.6%しかない。
つまり、日本は極端に狭い地域に多くの人口がひしめき合っている「東京一極集中・首都圏過密化が象徴的な国」である。したがって産業が首都圏に集中するのも当然で、これからもそれは変わらない。
■「多様な地方」が価値を持つ時代に
これは日本に限らず、国連が2023年に出したレポートでも「2050年には世界の人口の約7割が都市部に集中する」と予測されているように、21世紀における世界的なメガトレンドだ。日本だけが大都市から地方に人口が分散していくような都市政策ができると考えるのは無理筋と言うべきだろう。
しかし、それをネガティブに考える必要はない。なぜならこれだけ生き方や働き方の多様性が増す時代においては、「多様な地方」は価値を持ち得るからだ。
日本が世界に誇る気候帯の多様性が示すように、日本の地方もまた多様性に溢れている。これは今後、日本が持続可能な社会づくりをしていく上で大きな財産となるだろう。
これは違う言葉で言えば、「地域特性」であり「他の地域との差別化」という言い方にもなる。そして今回の地方創生2.0でも、これまでの金太郎飴的なまちづくりの反省から、個々のローカルデザインを活かしたまちづくりの重要性にフォーカスしている。
■「稼げる地域経済」にはニッチ性がある
もちろん「その地域ならでは」という差別化を図ったとしても、残念ながら大都市に若者や女性が惹きつけられる魅力ほどに求心力を持ち得ることはない。しかし、当該地域が必要としているだけの人材の質や数を確保することは十分可能だ。
その場合のキーワードは多様性というよりももう少し尖ったニッチ性がある方が確度は上がる。これは巨大な産業クラスターを生むようなものではないが、「稼げる地域経済」を形成するには十分でもある。
そして、このような特色あるニッチ産業や企業がある地域は、それらに響く若者や女性、子育て世代を惹きつける吸引力を持ち得るため、移住定住の候補ともなり得る。地方で少数ながらも地道に移住者が増えている自治体などがこのような要素を持っている場合が多いことには注目すべきだろう。
政局はかなりの混乱を生みそうな情勢ではあるが、その中でスタートする「地方創生2.0」もまた「日本の未来を占う」重要な施策である。各地方と特に企業には、これを追い風に魅力ある地域づくりの在り方を模索し、多くの若者や女性が誇りを持って働けるような産業を地域に創ってほしいと思う。