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雪不足の一方で「豪雪」も相次ぐ、冬季五輪が示したもの【オルタナ総研所長コラム】

※弊社代表の町井による「オルタナ総研所長コラム」

◼タイトル
雪不足の一方で「豪雪」も相次ぐ、冬季五輪が示したもの
https://www.alterna.co.jp/168511/

■記事のポイント

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックが閉幕した
華やかな競技の裏側で、「雪」そのものが静かに注目を集めていた
冬の祭典は、気候変動の影響を可視化するイベントになりつつある

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ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックが閉幕した。冬季最多の24個のメダルを獲得した日本人選手たちの活躍に胸を躍らせた人も多いだろう。華やかな競技の裏側で、もう一つの主役が静かに注目を集めていた。それは選手でも記録でもなく、「雪」そのものだった。

近年、冬季大会では自然の降雪だけでは競技環境を維持することが難しくなり、人工雪の利用が常態化している。造雪には大量の水とエネルギーが必要であり、山岳環境への影響も指摘されてきた。

冬の祭典は、気候変動の影響を可視化するイベントになりつつある。世界経済フォーラムも、2040年までに冬季オリンピックを開催できる国が大幅に減少すると警告している。

かつて雪は「そこにある自然」だった。しかし今、雪は維持しなければ成立しない条件になり始めている。ここに、私たちの社会が直面している変化が象徴的に表れている。

そしてこの変化は、スポーツの世界だけの話ではない。

■雪不足の一方、豪雪が相次ぐ
■水循環が変わり、雪の降り方が変わった
■GHG排出量の削減に加え「適応」も

雪は「白いダム」とも呼ばれる天然の貯水装置である。特に日本は世界有数の降雪地域であり、春の雪解け水が水資源を支えてきた。雪が減れば農業用水や生活用水に影響が及び、食料問題につながる可能性もある。

ところが一方で、日本海側では記録的な豪雪が繰り返されている。高齢化が進む地域では除雪の負担が深刻化し、自治体の費用も急増している。雪不足が語られる一方で豪雪が社会問題になっているという、一見矛盾した状況が生じている。

ここで重要なのは、雪が減っているか増えているかではない。

降り方そのものが変わってきたという点である。

■水循環が変わり、雪の降り方が変わった

地球温暖化は単に平均気温を上げるだけではない。大気中の水蒸気量を増加させ、降水の集中化を引き起こす。つまり問題の本質は「雪」ではなく、地球の水循環の変動なのだ。

水は農業、エネルギー、観光、物流、都市インフラなど、あらゆる産業の基盤だ。水循環が変われば、供給の遅延、需要の変動、インフラ維持費の増加、災害リスクの上昇といった形で社会経済に影響が及ぶ。気候変動は環境問題にとどまらず、社会の前提条件そのものを揺るがし始めている。

これまでの企業活動は、「気候は安定している」という暗黙の前提の上に設計されてきた。季節需要、収穫量、輸送計画、設備設計はいずれも過去の統計を基に成り立っていた。しかしその前提が崩れ始めている。気候変動は環境問題であると同時に、事業環境の変化でもある。

■GHG排出量の削減に加え「適応」も

これまで、企業の気候変動対策はCO2排出量削減が中心だった。もちろんそれは不可欠である。だが同時に、変わる環境の中で社会を維持する「適応」が年々重要な課題になっている。

サプライチェーンの再設計、気象データを活用した需要予測、災害時にも機能するサービスの提供、地域資源を踏まえた事業立地などは、環境活動というより事業継続に直結する取り組みになってしまっている。

気候変動は企業にとってコストとして語られることが多い。しかし見方を変えれば、社会に必要とされるインフラやサービスが変わり始めたというシグナルでもある。分散型エネルギー、水の循環利用、省力化技術、季節依存度の低い観光や地域サービスなど、課題解決と新たな市場は重なり合っている。

「例年通り」「平年並み」という言葉に違和感を覚えるのは、基準が揺らいでいるからではない。私たちの社会が、すでに過去の気候を前提に設計されているからだろう。

CO2削減という長期的な取り組みと並行して、変動する水循環の中で社会をどう維持するか。その問いに企業もまた当事者として向き合う時代に入っている。