2008.03.10
「スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。
その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。
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■自社のCSRの強みを分析
先日、岩手県盛岡市でCSRをテーマにした講演をさせていただきました。このセミナーには行政の方から商工会議所の方、市民活動をされている方などCSRに関わる幅広い層の50名ほどの方がご参加くださいました。
私の講演のテーマは「市民のCSR意識とは?」というものでしたが、時間も限られた中で、「CSRとは何か? 」を含めて解説する時間はありませんので、私が企画・運営の責任者をしているウェブサイト「CANPAN CSR プラス」で行った「CSRプラス大賞」で投票してくれた市民2万人のアンケート結果を元にお話しをさせていただきました。
■CANPAN CSR プラス■
http://canpan.info/csr/
講演を聞いてくださった方のアンケートの中で、「CSRが必要なことはわかるが漠然としていてよくわからない」というお声を多くいただきました。
私の説明が稚拙なことが最も大きな要因であることは間違いがないものの、一方で、CSRそのものがまだまだわかりにくいという現状があまり改善されていないということが大きいのだろうということもあらためて感じました。
このコラムをお読みくださっている皆さまにも同じようなご感想をお持ちの方がいらっしゃるのではないかと思い、もう少しCSRの取り組みそのものを身近なものとしてわかりやすく説明できないかと、今回はそこから入りたいと思います。
そこで、まず次に挙げる取り組みに関して皆さんの会社で行っている取り組みを考えてみてください。
1.企業理念実現のために行っている具体的な取り組み例えば、食品製造メーカーであれば、各家庭に美味しく安全な食品を提供するために行っている取り組みなど(農家との契約による安全な野菜の確保・製造工程での衛生管理等々)
2.社員が働きやすい職場環境を実現するために行っている取り組み例えば、育児や介護のための休暇制度、障害を持つ方々の雇用機会拡大等々
3.本業とは直接関係ないが、社会貢献的に行っている取り組み例えば、地元のお祭りへの協賛や会社周辺のボランティア清掃、NGOやボランティア団体への寄付など
上記の三つは、会社として取り組むべきCSRを優先順位順に並べています。ここで「おや?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。「CSR=社会貢献」と思われている方にとっては、この項目が最後なのは意外だろうと思います。
再確認するとCSRの一部として社会貢献がありますが、それはほんの一部です。
CSRの視点から見て1.の項目がたくさんあがった会社は、真面目で優良な企業です。1.に加えて2.も多くの項目が上がった会社は、一流の会社です。そして3.まで多くの項目が上がった会社は超一流です。(逆に1.と2.が少ないのに3だけ多い場合は「灯台元暗し」の可能性が高いので要注意です。)
この場合、会社の規模の大小は関係ありません。数人しか従業員がいない小規模な会社でもCSRの観点から見た時に一流になることは難しくありません。(勢いのある小さな会社はこの点が優れている場合も多いのです。)
皆さんの会社では各項目について、どのくらいの取り組みを挙げることができたでしょうか?わが社は一つも無いという場合の心配は無用です、近い将来会社自体が無くなります。
冗談はさておきまして、ここで列挙された各種の取り組みはそのまま会社のCSRの取り組みとその強みです。
自社が1~3のどの分野に強いかを知った上で、広報に結びつけるための分類をさらに進めてみましょう。
■自社のCSRの強みをさらに分類
先ほどの1.~3.の項目を有名な近江商人の商いの心得「三方良し」にあてはめてみます。1.に該当するのは本当は三方すべてですが、あえて分類するとお客様のことを考えたCSR「買い手よし」です。(BtoB、BtoCの両方の顧客を含めます。) 2は「売り手よし」、3は現代であれば環境問題などもこのカテゴリに包括的に入りますが、「世間よし」ということになります。
これで、皆さんの会社がどの分野のCSRに強いかがわかったと思います。ちなみにコンプライアンスなどの取り組みは、法の性格によりどのカテゴリに当てはまるかが変わりますので、その法の趣旨に合わせて分類してみてください。
これを、広報するべき対象を絞るため、さらに4つに分けていきましょう。
1.自己完結型
自社の取り組みだけで継続的なサイクルが成り立つ取り組み
例:従業員の工場での安全への取り組み、雇用機会の拡大など
2.パートナー連携完結型
自社および取引会社だけで継続的なサイクルが成り立つ取り組み
例:調達に関するガイドラインの策定など
3.地域社会巻き込み型
自社とその周囲の地域を巻き込んで継続的なサイクルが成り立つ取り組み
例:会社のある町の町おこし活動への参加や協力など
4.お布施型
積極的な意思で、本業との接点の有無は関係なく、社会のために直接的に貢献しようとする取り組み
例:NGOやボランティアへの寄付、社員によるボランティアなど
皆さんの会社は「三方良し」のどの分野で、どの「型」に強いでしょうか?
または偏っている場合もあるかもしれませんが、今回はその偏りも強みと考えましょう。(ただし、4.だけに偏るのだけはやめましょう。)
1.を軸に置いた広報は、従業員や就職活動の学生などを主な対象として自社のCSRに対する理解を深めてもらうことに役立ちます。
2.を軸に置いた場合、この広報は対象がかなり限定されますが、特にBtoBが中心の会社にとっては重要な意味を持ちます。
3.を軸に置いたCSR広報も最近は多く見かけますが、重要な点は、地域との一体感の創出です。自社がその地域で、あるいは社会でどんな立場と責任を担おうとしているかを表現しなければ広報費は無駄です。会社の理念を地域レベルで具体的な表現として打ち出す必要があるということでもあります。
4.を軸に置いたと思われる広報が最近は最も多いのですが、イメージ広告を出したい場合などを除いて、費用対効果で考えた場合、効果のほどは甚だ疑問です。
ここまで分類が終わると、自社が取り組むCSRの強みと、それを踏まえた上でそのCSRの取り組みをどのような人たちに理解してもらたいたいかを考えるための材料が揃います。
CSR広報も広告の基本原則と同様、ターゲットの設定が重要ですので、その対象を誰にするかを考える時には、まず自社のCSRの強みを知り、それを最大限に活かすことを考え、その上でもう一度ターゲットの設定に立ち戻ってじっくり考えるプロセスが大切です。
もし、より積極性を持とうとするならば、広告として最も狙いたいターゲット層にアピールするために自社のCSRは何が欠けているのかを明らかにし、その取り組みをカバーした上で広報することですが、このような広報ができる会社は、超一流になれる可能性を十分に持っていると言えます。
次回は、この1.~4.の広報の上で留意するべきことを検証していきたいと思います。
■ここがポイント■
1.自社のCSRの取り組みにおける強みを分析する
2.強みを理解した上で、広報したいターゲットが誰かを考える
3.強みをターゲットに理解してもらうために必要なことを考える
■こちらもぜひご覧ください—————————————
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