• 2007.12.17

    子どもに自慢できるCSR広報を

    スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。

    その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。

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    ■CSR=社会貢献という根深い誤解

    日本で初めての試みである「市民が選ぶCSR大賞」は、おかげさまでマスコミ各社からも注目をいただきながら、大好評のうちに終えることができました。
    本当にありがとうございました。

    ■「CANPAN第1回CSRプラス大賞」授賞式開催結果■
    http://blog.canpan.info/csr2007/archive/40

    掲げた「投票目標数10,000票」も、「こういう真面目な投票でこの数字は確保が難しい」と言われながら、蓋を開けてみると二倍の20,000票ものご投票をいただけたことに、あらためて日本の「市民」の善意というものの強さを感じました。これは間違いなく今後の日本の力になっていくと確信しています。

    以前に書きましたが、「日本のCSR」は、江戸時代にはすでに完成された考え方が存在した企業の自然な行動様式の一つであり、海外から輸入されてきたものというわけではありません。
    ましてや「CSR=社会貢献」という誤った認識が広がってしまっている現状はとてももったいないことです。今回は、この誤解がいかにもったいないかということについて掘り下げてみましょう。
    私が所属する日本財団が運営するサイト「CANPAN(カンパン)」のコンテンツの一つ、「CANPAN CSR プラス」には、1700社を超える企業のCSRに関する情報公開度合が登録されています。その元になっている48の項目は「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三分野に分かれています。

    ■CANPAN CSR プラス■
    http://canpan.info/onlinehelp/csr/faq/faq_db.html#3_2

    この「三方良し」の考え方は、江戸時代に特に活躍した近江商人の「商いの心得」ですが、あえてこの表現を使ったのは、「CSRは海外のものではない」ということを強く意識できるよう日本の大先輩の知恵をお借りしたということでした。

    この48項目のうち、社会貢献に関する項目はわずかに4項目しかありません。つまりCSRを俯瞰する48項目中、12分の1しかないということです。実はこれでも割合的には多過ぎで、CSR活動における社会貢献というのは、純粋な意味で言えば1000分の1くらいでも十分かもしれません。
    「純粋な意味で」というのは、「その社会貢献活動が直接自分たちの利益に結びつかない活動」と言い換えることができます。企業の本質を考えれば、社会貢献ばかりやっている場合ではないはずで、結果として社会に貢献しているという状態こそを求めるべきなのです。

    ■従業員へのCSRでコストを投資に変える

    企業の本質は言うまでもなく利益をあげることですから、社会貢献を目的とした組織とはそもそもの目的が違います。しかし、CSRという話になったとたんに「企業も金儲けだけを考えていてはいけない」という話になってしまいます。
    これでは企業から見ると「CSRはコストだ」と思われてしまうのは無理のないことで、しかも別の号で書かせていただいたようにSRI(社会的責任投資)という企業をサポートする社会的機能が日本では脆弱ですからなおさらです。

    トロイの木馬を発見したシュリーマンが、まず商売で大成功して、そのお金で発掘をしたように、「社会貢献をガリガリとやりたい!」という高邁な企業理念に基づいて、全く別の商売で売り上げを上げていくというストーリーは、憧れではありますし、理想論的には素晴らしいながらも、現実には難しいことです。
    一番いけないのは、そのために本業に無理がきてしまうことであり、そのような社会貢献活動は長続きしませんし、社会も、当の企業も、そこで働く従業員も、誰も幸せになれません。

    今の世の中の潮流を見れば、企業戦略の一環としてCSRとその周知を行うことは不可避なことですが、CSRで言えば12分の1しか占めない「社会貢献」に全力投球し、それを売り物にして周知するのはあまりに非効率です。

    「CSRは効率だけで考えるべきではない」というご意見も世の中にはたくさんありますし、正論ではありますが、それで企業が倒産してしまっては本末転倒も甚だしい。ならば、それよりも他の分野、つまり回り回って自分たちの利益につながるためのCSRに注力することが大切だと思うのです。

    前回の号でもご紹介したとおり、世の中には、それをうまく活用している企業がたくさんあります。その中で、ぜひやってみてほしい取り組みは「従業員が家族に自慢できる会社になるためのCSR」です。

    会社で働く社員も家に帰れば一家庭人であり、父親であったり母親であったりします。そんな時、子どもに自慢できる会社で働いているというモチベーションは間違いなく会社を支える力に変わります。

    これが日本企業のCSRではとことん弱いのです。先ほどのCANPAN CSR プラスのデータベースを見ていただくとグラフで如実にわかりますが、「売り手よし」つまり従業員にとってのCSRがボロボロです。

    これでは会社が元気になるわけがありません。お客様や地球環境に目を向けることは不可欠ですが、ぜひ「従業員が元気になるためのCSR」として自社で何をやっているかを考え、それを広報するということを検討してみてください。

    それは、優秀な人材が自分の会社に就職してくれる可能性を高めるという重要な意味合いもありますから、「コスト」ではなく、「投資」に変わってくれます。

    ■ここがポイント■
    1.CSR=社会貢献ではない!
    2.CSR広報として社会貢献を前面に出す必要なし
    3.「従業員が元気になるCSR」を売り物にする

    ■こちらもぜひご覧ください—————————————
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