2007.06.25
「スーパー広報術」というサイトのメルマガで「CSR広報の時代」という連載をさせていただいています。
その内容を一部リメイクしてこちらに掲載いたします。
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■CSRを意識する学生たち■
前号で、「CSRは、社長が社員の一人一人の顔を覚えられるくらいの規模の企業こそが主役になれる」ということを書きました。今回は、それを裏付けるために一つのアンケート結果を検証していきましょう。
私がウェブマスターをしている「公益コミュニティサイトCANPAN(カンパン)」では「CANPANCSRプラス」というCSR総合情報コンテンツを提供しています。
このサイトの調査の一環で、就職を意識している無作為の大学生(3年生と4年生)1,700名にCSRに関するアンケートを実施しました。
その中で、「CSRに無関心な大企業とCSRに積極的な中小企業のどちらに就職したいか」という質問をしたところ、55.9%の学生が「CSRに積極的な中小企業」への就職を希望すると回答しています。(32.8%はどちらとも言えないと回答)
これらの学生は特にCSRに関心が高い学生というわけではありません。回答学生の58.8%は「CSR」という言葉を知らなかったと答えています。
そこで、具体的な質問に入る前にCSRに関する知識を知ってもらった上で回答を進めてもらいました。いくつかのCSRに該当する企業行動がCSRに該当すると思うかという質問も行い、正答率が高い状態で回答を続けてもらったため、CSRに対する理解を進めながらの回答結果ということになります。
この結果から見えるものは、学生が企業を選ぶ際の選択肢の一つとして、CSRという言葉を知っているかどうかは関係なく、CSR的な活動を企業選択の判断材料としているという事実です。
■企業理念の広報がCSRに■
「CSR」は、アルファベット三文字でその企業が社会とのつながりにどう取り組んでいるかを表現しようとするものですが、学生はその言葉そのものではなく、その会社がどういうことに取り組んでいるのかを見ようとしています。
つまり、その企業が自分の考える「社会への貢献の方法」や「自分を大切にしてくれそうな職場環境」などに対して、CSRという言葉は知らなくてもちゃんと頭の中で理解していて、そのような企業への就職を希望しているということです。
逆に言えば、自社のCSRを社会へ周知しようとする時は、CSRという言葉にとらわれず、もっとわかりやすい言葉で発信しなければ多くの人の共感を呼ぶものとはならないとも言えます。その点、企業理念というのはとてもわかりやすく、共感できるものがたくさんあります。
多くの企業の企業理念は、どこかでCSRとつながっています。とすれば、企業理念の実践をもって、自社の社員と社会に対してそれを周知していくというほうが「わが社はこんなにCSRに取り組んでいるのです。」と言うよりもわかりやすいことになります。
そして、そのような周知を行う場合、自社の取り組みが実はCSRであることを知っているのは、それを展開しようとする広報担当と経営者だけで当面は充分ということでもあります。
もちろん世の中にはCSRに敏感な人たちがたくさんいますので、それらの人々は間接的にそれらがその企業のCSRであることを意識しますが、その人たちは勝手に気づいてくれるのですから、わざわざCSRですと宣言する必要もないわけです。
一見その会社の企業理念をどう実践しているかを周知しているようでいて、実はCSRについて周知していた、という広報の仕方は、陰徳を好む日本人の社会に受け入れられやすいと言えます。
CSRは、日本では海外から輸入されてきた義務的かつ「善意の塊」的な概念として定着しつつあるので、「わが社のCSRはこんなにすごいです!」とPRしてしまうとむしろ逆効果になってしまいがちです。
しかし、企業理念を実践していることについては、好感を持ってもらえる材料です。そして、この企業理念の実践を行う上で、中小企業ほど経営者の言葉が現場に伝わる規模感はないのですから、CSRの展開は中小企業のほうが主役になれるものなのです。
■ここがポイント■
1.学生はCSRを実践する中小企業への就職を希望している。
2.CSRという言葉でCSRを周知する必要はない。
3.経営者の声が直接届く規模の企業こそCSRの主役となれる。
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